植野:すごいギアチェンジですね。ただ、どうして外資系の、しかも金融・証券だったんですか?
星:好きなことを仕事にする以外に考えたのは、社会人として生きていくための武器として自分のエッジを付けようということ。同時に、キャリアに柔軟性をもたせたいと思ったんです。その基準で選ぶと、戦略コンサル、もしくは外資系の投資銀行や投資ファンドという選択肢になって、数社でインターンをさせてもらいました。
植野:授業も出ず音楽に明け暮れてインドを放浪していた人が、よく名だたる会社のインターンに通りましたね。面接必勝法でも?(笑)
星:僕も不思議でしたし、運が良かったのかなと。インターンをやった結果、自分は投資銀行が向いていると思ったんです。財務という仕事にはわかりやすいエッジがあって、かつキャリアも柔軟性がある。
植野:モルガン・スタンレー時代はどうでした?
星:第一志望の会社でしたし、納得して入ったので期待値と実際の仕事にギャップがなく、仕事にフルコミットしていました。電話は朝でも夜でも常にワンコールで取るので、クライアントに「星コールセンター」と呼ばれるほどで。
植野:何がハードワークの支えだったんでしょう。
星:成長したいという欲求、加えてお客さんから感謝されることの両輪だったと思います。いまも生きている学びは、仕事を「やり切る」というプロフェッショナルとしてのコミットメント。プロフェッショナルの定義とは、期待値を超える存在ですから。
あとは、インテグリティ(誠実さ)ですね。投資銀行のビジネスはディールが成立しないと報酬が発生しないので、インセンティブがそちらに傾きやすい。でも、私は「あなたの会社にとって、この条件では、このM&A案件はやらないほうがいいからやめましょう」ということもありました。結果的には、中長期的な信頼関係を構築することだと思ったからです。
多くのステークホルダーとコミュニケーションを取らせてもらうCxOは、誠実なコミュニケーションを取ることが大切です。あまり大きくも、小さくも見せ過ぎない。良いことだけじゃなくてリスクもあるなら、ちゃんとフェアに情報を共有する。その誠実さのバランスをいつも心がけています。