その後ミュラーとギブソンは、サケイの羽毛の小羽枝のらせん部分が、濡れるとほぐれて羽弁と垂直になるところを観察した。これによって、密に林立した繊維が毛管現象によって水を保持することができる。同時に、先端近くの小羽枝は内側に曲がり、水の保持を手助けする。
ミュラーは感心して、その羽毛の構造を「並外れて素晴らしい」と表現した。
「詳細な構造が私たちを興奮させました」とミュラーは言った。「これこそが、この原理を使って新しい材料を作り出すために理解しなければならないことなのです」
サケイの羽毛をモデルと刺激にして、いったいどんな新素材が生まれるだろうか?ミュラーとギブソンは、彼らの発見が、液体の吸収を制御し、確実な保持と容易な分離が必要な将来の工学的デザインの下支えになることを期待している。たとえば、砂漠地帯で水には乏しいが、霧や露は頻繁に見られるところでは、この羽毛構造を取り入れた巨大な網を使って効率よく水を集めることができるだろう。
「これがそのようなシステムを改善する一手段になることが想像できます」とギブソンが説明した。「この種の構造を持つ材料は、より効果的に空気中の水を採取し、保持することができるかもしれません」
ミュラーは、内部に羽毛のような構造を持ち、動かした時に中身の液体がちゃぷちゃぷ跳ねない水筒を提案した。そんなハイドレーション・パック(運動用給水袋)があれば、ランナーには特に重宝されるだろう。
また彼は、簡単に使える新しいタイプの医療用綿棒も考えている。「液体を効率よく吸い上げ、かつ簡単に分離できます」と話し、パンデミック時の鼻咽頭ぬぐい検査による検体取得において、綿棒からの検体の切り離しが問題だったことを付け加えた。
ミュラー教授とギブソン教授は、同様の構造を3Dプリントして、商業利用のための研究開発に利用することを考えている。
出典:Jochen Mueller and Lorna J. Gibson (2023). Structure and mechanics of water-holding feathers of Namaqua sandgrouse (Pterocles namaqua), Journal of The Royal Society Interface 20(201):20220878 | doi:10.1098/rsif.2022.0878
(forbes.com 原文)