ルリオーストラリアムシクイ(スズメ目オーストラリアムシクイ科の鳥類)と人間に共通するものは何か? 集団で生活していること。しかし、集団生活の利点とは何か? ムラサキオーストラリアムシクイにとっては、数が多いことによる安全性だ。おそらくは。
最近の研究によって、救難信号を聞いたルリオーストラリアムシクイは、知らない声の主よりも、自分に最も近い社会的集団に属する個体を助けることの方が多いことがわかった。
この複雑な社会的取り決めは、重層社会として知られている。これらのグループ間の社会的関係は安定していて予測可能だ。重層社会は親族関係を中心に構成されることが多いが、救助行動自体は親族関係とは独立して起こり得る。さらに興味深いのは、これらの小鳥たちの個人的リスクの取り方が、人間の狩猟採集民の集団で見られるのと同じルールに沿っていることだ。
「どちらの種も重層社会に暮らし、それは密接な関係にあるごく少数の個人(個体)からなる中核グループから始まります」と論文の主著者で、オーストラリア・モナッシュ大学博士課程大学院生の進化生態学者エットレ・カマレンギ(Ettore Camerlenghi)は声明で説明した。カマレンギは動物社会進化、特にスズメ亜目の鳥類の社会進化に関心があり、組織化の形態や集団内で協力行動が果たす役割などを理解しようとしている。
しかし、重層社会のもたらす利益とは何だろうか。
重層社会が人類の進化の大部分を特徴づけ、影響を与えており、狩猟採集社会では特に顕著であることを私たちは知っている。重層社会はクジラ、ゾウさらには一部の霊長類についても研究されているが、この社会的階層が、オーストラリアムシクイなどの鳥類について説明されたのはごく最近になってからだった。
「この鳥たちには、狩猟採集民と同じく、3つの異なる関係があることを発見しました。同じ繁殖グループとの関係、同じ社会に属する親しい個体との関係、およびより大きい集団に属する未知の個体との関係です」とカマレンギは説明した。
ルリオーストラリアムシクイの一族は非常に結束が強く、2~6羽の個体で構成されている。繁殖期以外、これらの家族集団は近くの別の家族集団と合体して上位集団を形成し、その上位集団らが合体して、さらに大きい地域集団を形成する。その過程で個々の鳥たちは、さまざまな強さの社会的関係を数多く開拓する。
これらの小さな鳥たちの関係をさらに理解するために、カマレンギらは鳥たちを捕獲し、それぞれに色を組み合わせた識別用レッグバンドを付けた。このレッグバンドによってすべての個体を双眼鏡で認識し、追跡することが可能になる。
レッグバンドの装着と並行して、カマレンギらは、鳥たちが発するあらゆる救難信号を録音した(個々の鳥の声は、人間と同じく独特であり、少なくとも他の鳥には、識別が可能)。
ルリオーストラリアムシクイは家族や仲間の救難信号を聞くと、警戒声を発する、捕食者に近づく、あるいは「rodent-run」と呼ばれるはぐらかし行動をとるなど、さまざまな戦術を使って助けようとする。rodent-runという作戦では、1羽の鳥が捕食者に近づき、猫背の姿勢をとってマウスのように行ったり来たりする。この「利他的はぐらかし行動」は捕食者を混乱させると同時にそれを実行する個体も大きな危険に晒される。