失恋ソングは破局を乗り越えるのに役立つか、心理学者の見解

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つらい破局を経験した後にセラピーを受けにくる人は、しばしば「気持ちを解放するために音楽を聴いている」と話す。そして、時に次のような疑問を口にする。

・別れた後は、なぜ悲しい音楽に心惹かれるのか
・同じ別れの歌に何度も繰り返し慰めを求めるのは、健全なことなのか
・悲しい歌を聴くと、恋愛に対して冷笑的になるのだろうか

音楽に私たちの心を動かす計り知れない力があることは明らかだ。2015年の研究で、この現象を引き起こす主な要因の1つに、相互接続された脳内ネットワークの集合体で意識的自覚、内省、自伝的記憶や感情に関わる「デフォルトモードネットワーク(DMN)」が関連していることがわかった。破局といった精神的苦痛を経験すると、デフォルトモードネットワークが正常に機能しなくなる場合がある。好きな音楽を聴くことでネットワークが働きを再開し、動揺する心に親しみと安心感をもたらすのだ。

ただ、悲しい音楽を悲しい気持ちに調和させることに実際の治療効果があるかどうかについては、まだわかっていない。本稿では、破局後に悲しい歌を聴くとどんな影響が出るのかという疑問の解消に役立ちそうな2つの発見を紹介する。

1. 悲しい歌にネガティブな感情を抱きやすい人もいる

心理学の学術誌『Psychology of Music(サイコロジー・オブ・ミュージック)』に2021年に発表された論文によると、人が悲しい音楽を聴くのは、美的快楽のため、ネガティブな感情に折り合いをつけるため、そして慰めを得るためだという。吸収力、共感力、経験への開放性といった性格特性が高い人ほど悲しい音楽を高く評価し、困難な感情を克服するためにこうした音楽に依存する傾向があることもわかった。

この研究ではさらに、悲しい音楽を聴くことで相当数の青少年(17%)、特に少女がネガティブな影響を受けたことも明らかになった。これらの研究結果は、悲しい音楽が気分に普遍的な影響を与えるとは限らないが、一部の個人とりわけ特定の性格特性を持つ人の場合は、悲しい歌を聴くことでネガティブな感情を経験しやすい可能性があることを示唆している。

リスナーとしては、歌われていることのすべてが現実に基づいているわけではないと理解しておく必要がある。悲しいポップソングは芸術的感性から評価され得る(そして時には気分を良くするのに役立つ)が、意図的に、または意図せずして精神衛生上の問題を美化することがあるため、メンタルヘルスのサポートとして依存するのは推奨できない。

悲嘆に暮れている人や、別れが人生に自滅的な影響を及ぼしているのではないかと思う人は、そうした状態に効果的に対処する訓練を受けたメンタルヘルス専門家に相談して欲しい。
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編集=荻原藤緒

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