まるで空飛ぶスポンジ、羽毛に水を蓄えて運ぶ鳥の能力を科学者が解明

クリムネサケイ(Pterocles namaqua)成鳥オス。ナミビア、エトーシャ国立公園(Yathin sk via Wikimedia/CC BY-SA 3.0)

オスのサケイは空飛ぶスポンジだ。砂漠の遠方による水場で大量の水を羽毛に吸い上げ、何十キロメートルも飛んで喉を渇かしたヒナに届ける。

アフリカの厳しい砂漠地帯に住む、サケイと呼ばれる種類の鳥は、長い間観察者たちを不思議がらせ、また喜ばせてきた。それは、喉の渇いたヒナたちのために、胸の羽毛で水を吸いあげ長い距離を飛んで運ぶからだ。いったいどうやっているのか?高解像度顕微鏡と最新鋭の3D技術を使って、ジョンズ・ホプキンス大学マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、サケイの羽毛がどうやって大量の水を保持しているかの謎を解明した。

「これほど完璧に効率よく水を取り込み保持する仕組みを自然が作り出したことは大きな驚きです」、と主著者で、ジョンズ・ホプキンス大学土木・システム工学科准教授のシステムエンジニア、ヨハン・ミュラーが声明で語った。ミュラーの専門分野は、科学、応用、設計の交わる部分にあり、主な関心事は、3Dプリンティングと製造技術および、コンピューターによる設計を利用して、スマート材料を作ることだ。現在8つの特許を保有している。

「技術的観点から見て、この発見は新たなバイオインスパイアード(生物に学んだ)な創造につながるものだと考えています」とミュラーは指摘している。


クリムネサケイの成鳥オスが特殊な羽毛を水に浸す前(a)と後(b)。(c)の点線で囲まれた部分に水を貯める。ハーバード大学比較動物学博物館所蔵(DOI:10.1098/RSIF.2022.0878)

サケイは、多くの人には馴染みのない、小規模な鳥の種族だ。一般人にとっては形も大きさもハトによく似ているが(遠い親戚にあたる)、よく見ると、特に趾(あしゆび)と脚部に違いがある。

主に地上で生活し、種を常食としているが、見つければ昆虫も食べる。砂に紛れるようなグレイ、淡黄色あるいは茶色の羽毛は、斑状あるいは縞状に彩られ、彼らの住む樹木のない景観に同化する。長く鋭くとがった翼によって素早く飛ぶことが可能であるとともに、意外なほど短い足で非常に早く走ることもできる。サケイは大きい群れをなすところを見られることが多いが、繁殖期にはつがいを作る。地面を浅く削って巣を作り、捕食者を避けるために水場から何kmも離れた場所を選ぶ。ヒナは早成性で餌は自力で食べられるが、1カ月ほどは飛ぶことができない。そのため、水の摂取が問題になる。
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翻訳=高橋信夫

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