この穴は、太平洋側からフアンデフカプレートが北米プレートの下に沈み込む「カスカディア(カスケード)沈み込み帯」の上にあり、2015年にワシントン大学の研究者によって偶然発見されていた。ギリシャ神話の巫女にちなんで「ピュティアの泉」と名付けられている。
この穴から吹き出している液体については、周りの海水より9度ほど温かく、化学的に区別されることなどは知られていたが、同大学のチームが先ごろ米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表した研究論文によると、カスカディア沈み込み帯のプレート境界付近に源があり、そこでの温度は約150〜250度と推定されることなどが新たにわかった。
研究チームは報道発表で、太平洋でこうした噴出口が確認されたのはピュティアの泉が初めてだが、同じような穴は付近にもっとある可能性があるとの見解を示している。
論文や報道発表によると、この液体はカスカディア沈み込み帯で2枚のプレート間の潤滑油のような働きをしている。沈み込み帯から液体が放出されていくと、プレート境界にかかる流体圧力が低下し、その結果、プレート同士は動きにくくなり、ストレス(ひずみ)が蓄積される可能性がある。溜め込まれたストレスが大きくなると、それが解放されたときの反動で大きな地震が起きると考えられる。
カスカディア沈み込み帯では1700年にM9.0と推定される大地震が発生しており、津波も引き起こしてバンクーバー島などに壊滅的な被害をもたらした。そのため太平洋岸北西部では長年、大地震が懸念されており、雑誌ニューヨーカーは2015年の記事で「およそ700万人が被災し、北米史上、最悪の自然災害になるおそれ」があると警鐘を鳴らした。2011年に日本の東北沿岸部を襲ったような大津波も想定される。
(forbes.com 原文)