アラスカの地すべりが歴史的な巨大津波を起こす恐れ

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アラスカ中南部の2つの氷河の間で進行中の地すべりが、現地に過去に例を見ない規模の津波を起こす可能性がある。州当局は船舶利用者などに向けて、可能であればその区域を避けるよう要請している。

その不安定な斜面の塊は、大きさが約5億立方メートルと推定され、ウィッティアという小さな町から50キロメートルほど離れたプリンス・ウィリアム湾バリー・アームの上方で、1本の長い急傾斜した塊になっている。

これらの斜面は数十年前から不安定だったが、過去10年の新たな取り組みによって、その移動に関する新たなデータが得られた。動きは一旦減速したように見えたが、2022年8月23日、再び移動が検知され、その後2カ月間移動距離が増えてるため、アラスカ州地質・地球物理調査書(ADGGS)は警戒警報を発行した。

「危険な状況が進行中のため市民には最適な判断を下し、ハリマン・フィヨルド、カレッジ・フィヨルド、およびポート・ウェルズ上方部を含むバリー・アーム地域への立ち入りを極力避けるよう要請します」と10月21日付の最新情報に書かれている。

NASAの協力を受けた過去の研究は、この不安定な塊の全体が下方の海中に滑り落ちた場合、歴史的な大津波を起こす可能性があり、その規模は近代では過去最大だった1958年のリツヤ湾(アラスカ南東部)大津波より大きくなると報告している。

当時、地震が巨大な岩盤すべりを起こし、そこで生じた巨大津波は524メートルという驚くべき高さになった。

バリー・アーム地すべりの場合、この数週間に毎日最大数センチメートル動いていることがすでにわかっている。破壊はいつ起きても不思議ではないが、そこで起きる地すべりがどのくらいの規模で、どれほどの量の物体が海に落ちるかはわかっていない。

「不明なことはたくさんありますが、特に重要なのが移動する物体の厚さです」と米国地球物理学連合(AGU)の地すべり専門家、デーブ・ペトリーはいう。「残念なことに、地すべり近隣の水域に近づくことが危険なため、現在アクセスが制限されています」

近くに人口密集地域はほとんどないが、それでもADGGSは、津波が「ウィッティアやプリンス・ウィリアム湾北部の住民や勤め人あるいは観光客に破壊的被害を与える可能性はあります」と警告している。

「初期の研究は、プリンス・ウィリアム湾のその他の地域やインフラストラクチャも、重大な津波や危険な潮流に襲われるリスクがあることを示しており、そこにはバルデス、コルドバ、タティットレック、およびチェネガが含まれています」

もちろん最悪のシナリオは、現地を大地震が襲い、斜面全体が海に落下することだ。そのような揺れは、この地域では珍しいことではなく、バリー・アーム周辺の水域は当分の間危険区域に指定されている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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