キャリア

2023.04.16

「目の前の喜び」を原動力に変える シバジム柴田陽子の仕事術

柴田陽子事務所 代表取締役 柴田陽子

仕事は自分のためである一方、クライアント、顧客、あるいはチームなど、たいてい「誰かのため」でもある。しかし、そうした仕事を続けるうちに、自分自身の夢がないことに焦り、転職か、独立か……キャリアに迷いが生じてくる。こんな経験はないだろうか。

潔く「目の前の仕事」を自分の夢にして、それを最大限に楽しむにはどうしたらよいのか。

ローソン「Uchi Café SWEETS」やパレスホテル東京の全7料飲施設など、数々のブランディングを成功させ、多くの経営者から信頼を得ている柴田陽子。自分の名を掲げた柴田陽子事務所、通称“シバジム”代表であり、自らの夢を実現していくキラキラした女性に映る彼女だが、聞けば、「自分は小者だから、誰かの夢を応援する仕事を選んだ」と話す。女性リーダーのロールモデルの素顔は、いたって自然体だ。

柴田は、目の前の人だけに集中し、その場で最も正直な言葉を探しながら話す。その落ち着いた声は、「この人の話す言葉は信頼できる」と相手に感じさせるエネルギーに満ちている。

これがシバジムの成功の秘訣だとするならば、そのスタンスはどのように培われたのか。相手の何を見て、どのように言葉を選んでいるのか。柴田がこれまでのキャリアを振り返りながら、仕事との向き合い方を語る。

誰かのための仕事は「誰」のためか

最初に、私にとって初めての「誰かのための仕事」についてお話させていただきます。

それは私が29歳の時、外食企業の役員秘書をしていた頃のことです。上司から「約1億円の予算をつけるから、行列ができるレストランを作ってみるように」と言われました。自分のアイデアを会社のお金で実現できる初めての大きなチャンスでした。

私は子どもの頃からアイデアマンで、空想豊かなタイプ。当時の上司とも理想のレストランについて日常的に話していたので、チャンスが私に降ってきたのだと思います。こだわりを具現化したそのレストランは成功し、華やかなお客様であふれ、メディアからの取材も殺到しました。

ですが私がいちばん嬉しかったことは、その店で働く人たちの声。アルバイトの若者が「この店がカッコいいから、親を連れて来たい」と言ってくれたり、閉店後、バイト同士が店について熱く語り合っている姿を見たりした時の喜びの大きさには、私自身が驚きました。

上司が喜ぶ顔より、お店に行列ができることより、経済的な成功より、一緒に働く人たちが嬉しそうな姿を見ることが自分はいちばん嬉しいのだと、自分の価値観を目の当たりにした経験でした。
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文=鶴岡優子 写真=小田駿一 編集=鈴木奈央

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