キャリア

2023.04.16 11:00

「目の前の喜び」を原動力に変える シバジム柴田陽子の仕事術

人は「感謝」で育つ

相手の心の声を聞き、相手に思いを馳せる力は、生まれ育った環境に拠るところもあれば、仕事で磨かれることもあります。

私の母は、来客をもてなす料理を張り切って考えるような人でした。考えるだけでなく実際に作り、私たち子どもを相手に試食会をするほど。そして、来客が喜んで帰られると、そのことをいつまでも喜んでいました。当時の私は、なぜそこまでするのだろうと不思議に思ったものですが、今は、その “誰かのために動いて喜ぶ”母の血を受け継いでいるなと思います。

シバジムでも、ゲストにお弁当を用意することがあります。その人は何が好きで、どんなお弁当を用意し、どんな風に紹介すれば自分は招かれていると感じてくれるだろうか。お弁当一つとってもそこに深い意味があることに、シバジムのメンバーには気づいて欲しいと思っています。

考えて選んだお弁当をゲストが喜んだとき、それはメンバーにとっても嬉しいことになります。しかもそれが、好きな服を買ったり美味しいものを食べたりと、自分のためにした喜びよりも大きな喜びであれば、それが彼らの成功体験になります。誰かを思ってする小さなことの積み重ねの中で、誰かを考える解像度は高くなり、次はどう準備しようかと想像の車輪が回るようになっていきます。

人は評価されることで、自分の価値を見出します。その評価とは、「ありがとう」です。目の前の人に喜んでもらう行動を経済活動の中で回すと、健康的な社会が作られていくと思います。


時代はスモールストロングチーム

若いメンバーからは「感性を磨きたい、どうしたらセンスよくなれますか」と、質問されることがあります。

そんな時、私は「感性」よりも「感受性」を磨くことが大事だと伝えています。良い・悪いだけでなく、好き・嫌いを感じる力が豊かな人ほど、人に共感し自分の意見を伝えることができるからです。

リーダーもまた自分がどう感じているか、部下に具体的に伝えることが大切です。チームの風土は、多くの人が考えているよりもずっと速く根付いてしまうもの。いわゆる判断や結論だけでなく、具体的な場面で何をどう感じているのかを伝える。自分の思いを込めて話すリーダーがいるチームは、「らしさ」の浸透が速いです。

一方で、その「らしさ」は研修や仕組みだけでは伝播していきません。私はこれからの時代は、スモールストロングチームだと考えています。お互いに近い距離で、信頼を感じながら成長できる規模は30人程度でしょうか。これを大きな組織にするには、そのチームリーダーとトップが信頼関係を築き、権限を移譲していくことが必要です。
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文=鶴岡優子 写真=小田駿一 編集=鈴木奈央

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