衛星の廃棄をなくす、宇宙ガソリンスタンドの壮大な使命【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#16】

伊東せりか宇宙飛行士と考える「地球の未来」#16

宇宙産業に挑戦するなら、今がチャンス!

せりか:国際宇宙ステーション(ISS)に民間企業として初めて水を補給したのは、Orbit Fabでしたよね。
 (C)小山宙哉/講談社

(C)小山宙哉/講談社


ダニエルさん:
そうですね。2018年にOrbit Fabを創業し、市場分析やスタートアップ企業として通常、必要なことすべてを検討していたときに、私たちはいくつかの大きな技術的課題と認識上の課題があることに気が付きました。

うち1つが、衛星は使い捨てるものだと考えている人々に、燃料を補給することで衛星を使い続けられることを理解してもらうパラダイムシフトを起こす必要があることでした。そこで、軌道上で私たちの衛星から顧客の衛星に燃料を移送するのと同じような実証を行い、燃料補給が現実的であると人々に示すことにしました。

まず行ったのが、ISSで燃料に見立てた水の供給タンクと貯蔵タンクを開発し、移し替える実験です。アメリカのISS National Labと契約し、宇宙飛行士が私たちの装置を使って作業する時間の確保と、ISSへの打ち上げ枠を提供していただきました。2019年のことです。

せりか:2018年に創業して、2019年にはISSで実証実験を行うなんて、ものすごいスピードですね。今後の計画を教えてください。

ダニエルさん:まずは多くの衛星事業者が使っているヒドラジン、その次にキセノンを軌道上の衛星に供給して、市場を創出することを目指しています。しかし、どちらの物質も小惑星や月では得られないので、採取が見込める過酸化水素に移行すると考えています。

せりか:Orbit Fabは、日本のスタートアップ・アストロスケールが打ち上げを計画している政府や民間の衛星運用者向けに衛星の軌道維持や姿勢制御、墓場軌道への廃棄などを行う「寿命延長衛星」に、燃料を補給する契約を締結したと発表されていましたね。

最後に読者へのメッセージをお願いします!
 (C)Orbit Fab/アストロスケール

(C)Orbit Fab/アストロスケール


ダニエルさん:
宇宙産業には民間の資金が投入され、急速に変化しています。宇宙開発に携わる人々にとって、今はとてもエキサイティングな時期ですよね。宇宙開発には技術者はもちろん、マーケティングやビジネス、ファイナンスなど、あらゆる分野の人々が関わってきています。多くの企業がさまざまなことに取り組み、技術の融合によって宇宙の経済圏を活性化させています。

宇宙産業を投資対象として、キャリアアップの機会として、またイノベーションのための場として見るには、今が絶好の機会だということが言えます。そしてもちろん、サステナビリティの観点からも宇宙産業は重要です。ありがとうございました!

せりか:ありがとうございました!


せりか宇宙飛行士との対談企画第16弾は、Orbit Fabの創業者 兼 CEOのダニエル・ファーバーさんにご登場いただき、燃料補給ビジネスの動向や宇宙開発の必要性をうかがいました。

次回は、小型ロケットを開発するイギリスのベンチャーSkyroraでビジネスオペレーションマネージャーを務めるデレク・ハリスさんに、輸送ビジネスのトレンドや環境にやさしい燃料の開発動向などについて聞きます。お楽しみに!

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