「動物園」の人間社会における重要な役割に関する研究

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動物園が地域コミュニティや社会全般に与える恩恵は、多くの人たちに軽視されている。

動物園や水族館、鳥類園などは、世界で最も人気の高い観光名所の1つであり、年間7億人以上が訪れている(本稿を通じて動物園、水族館、鳥類園を合わせて「動物園(zoo)」と呼ぶ)。この圧倒的な訪問者数だけでも、これらの施設が世間に影響を与える比類のない場を提供していることがわかる。しかし、驚くべきことに、動物園が社会に与えている利益は一般に過小評価されがちだ。

最近発表された研究によると、動物園は自然保護や応用動物科学に重要な貢献をしていることに加えて、人間社会の認識や自然社会への関心の持ち方に関して重要な役割を果たしていることがわかった。

動物園がどのように近隣の人々に影響を与えているかを理解するために、英国、アイルランドおよびフランスの研究者からなる国際チームが、動物園が成し遂げてきた仕事を再考察し、彼らが4つの主要目的(保護、教育、娯楽、および研究)を達成するために実施している動物園戦略を検討した。


動物園の目的を広く統合することで、来場者だけでなく社会全体への影響を拡大できる(doi:10.3390/jzbg4010006)

本研究の一環として、研究チームはインターネットを使って動物園のプレゼンスと4つの目標の達成度を評価するために、動物園の出版物と支援している活動を調査した。分析の結果、チームは現代の動物園の目標として第5のテーマを追加すべきであると提言した。それは人間の幸福だ。人間の幸福は、動物園の社会的価値を大きく高める(参照)と彼らは主張する。そのためには、飼育している動物や自然、さらには人間である来場者や従業員に対する動物園の責任の全体像を提示する必要がある。

「動物園は娯楽と動物のコレクションの場所以上の存在です」と動物行動科学者で英国エクセター大学動物行動学・心理学研究センター専任講師のポール・ローズはいう。「動物園は人々が自然を体験し、自然保護、生物多様性および持続可能性の理解を深めることのできる重要な財産であるとともに、人間のメンタルヘルスと幸福に多くの良い効果をもたらします」
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翻訳=高橋信夫

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