マンモスはいつ絶滅したのか?

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マンモスの正確な絶滅時期をめぐる謎は長い間、古生物学者を魅了してきた。

2021年に科学誌『ネイチャー』に発表された最新の年表は、私たちが信じていたよりもっと後にマンモスが絶滅したことを暗示している。国際的な研究チームがマンモスの環境DNAを調べたところ、3900年前にも北米とアジアにマンモスの大規模な集団が存在したことが示唆された。

しかし、シンシナティ大学助教授のジョシュア・ミラーとコロラド大学ボルダー校のカール・シンプソンは共同執筆した論文の中で、最新の年表を確立するのに使われた環境DNAは以前認識されていたよりもずっと複雑だという異なる見方を示している。

「問題はそのDNAが何年前のものなのか見当もつかないということだ」とミラーは指摘した。「堆積物は複雑だ。年代が異なる物質がいつもいっしょに埋まっている」という。

研究者らは堆積物やその中に含まれる物質を年代測定するための多くのツールを持っている。しかしミラーによると、すべてが年代測定できるわけではない。

「骨、歯、木炭、葉などあらゆるものの年代を放射性同位体炭素に基づき測定することができる。これは非常に強力だ。だが現在のところ、堆積物に含まれるDNAをそれぞれに年代測定することはできない」とミラーは語った。

2022年にカナダ・ユーコン準州クロンダイクで見つかったマンモスの赤ちゃんのような最近の発見から、何万年も前に死んだ氷河期の動物の多くが北極の乾燥した低温環境でミイラになることがわかっている。堆積物に保存されている環境DNAが生きている動物から放出されたものか、それとも死んだ動物からのものかは研究者にはわからないとミラーは話した。

「DNAは常に生物から放出されている」とミラーはいう。「実際、DNAは動物が死んだ後も放出され続けている。分解が遅いところでは、長い間死んでいた生物種や大昔に絶滅した生物種のものでさえ周囲の堆積物に入り込み続ける。北極などの寒冷地では何かが分解されるのに何千年もかかることがある」とも語った。

研究者によると、北極圏では動物の腐敗が遅いために、最近発見されたマンモスの化石から数千年遅れてマンモスのDNAが現れたのかもしれないという。この論文では、南極付近で見つかったゾウアザラシのミイラ化した遺体は5000年以上前のものである可能性があることを指摘している。

シンプソンは最近浸食された丘の中腹から海洋環境を研究する自身の仕事は古代の標本の年代測定がいかに難しいかを示していると語った。

「貝殻は何千年も海底に沈んでいることがある。海岸で目にする貝殻は最近死んだ動物のものかもしれないし、あるいは何千年も前に死んだ貝のものかもしれない」とシンプソンは言い「これは脊椎動物の記録でも起こることだ」とも指摘した。

化石の年代記録における不確実性から、多くの人はマンモスの絶滅に人間活動が直接の役割を果たしたかどうか疑問視するようになった。多くの地域では、マンモスの絶滅が人類の到来と時を同じくしていたようだ。人類は火を使って状況を大きく変え、マンモスを狩猟し、その象牙を利用したことが知られている。しかし、人間が与えた影響の大きさについては依然として議論の余地がある。

ほとんどのマンモスは1万年以上前に絶滅したが、これは最後の氷河期の終わりにおける重要な気候変動と同時期に起こっている。カリフォルニア州のチャンネル諸島やロシアのウランゲリ島などの島々には、ごく最近まで小さな孤立した個体群しか生存していなかった。

マンモスはいつ絶滅したのか」という論文は科学誌『ネイチャー』に掲載された。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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