金属製の「雪の結晶」を作り出す科学実験

亜鉛から作られたナノスケールの雪の結晶(WAIPAPA TAUMATA RAU, UNIVERSITY OF AUCKLAND)

原子レベルの研究をしているニュージーランドとオーストラリアの科学者たちが、思いがけない物質を作り出した。金属製の小さな雪の結晶だ。

研究チームの目的は、原子と分子を望んだ性質を持つ物質に成長させるボトムアップアプローチを採用して、ナノ材料を研究することだった(雪の結晶を作るのはクールだともオークランド大学のリリース文では述べられている)。

金属ナノ結晶を作るために、ニュージーランドとオーストラリアの科学者チームは半導体で使われる軟らかい銀色の金属で、室温よりわずかに高い温度で融解し、他の金属元素とよく混ざり合うガリウムを使用して実験を行った。

オーストラリアの研究チームはニッケル、銅、亜鉛、スズ、プラチナ、ビスマス、銀およびアルミニウムで実験を行った。それぞれの金属は高温でガリウムに溶かした。冷却すると、ガリウムは液体のままだが金属の結晶が析出した。

ニュージーランドの研究チームは、異なる金属から生まれる結晶の形状が異なる理由を説明するために分子動力学のシミュレーションを実施した。

「今回わかったのは、液体ガリウムの構造が非常に重要だということです」と同研究に参加しているニュージーランドの科学者ニコラ・ガストン教授は説明する。「新たな発見でした。なぜなら私たちは液体には構造がない、あるいは不規則な構造しかないと考えてきたからです」

異なる金属の原子構造と液体ガリウムの相互作用によって、異なる形状の結晶が作られることが明らかになった。

使用する金属によって、できあがる結晶の形状は立方体、棒状、六角形の平板そして雪の結晶などになる。亜鉛はそれぞれの原子が隣り合った等しい距離の原子6つに囲まれて、6つに枝わかれした対称性を備え、雪片のようなデザインになる。研究者らはガリウム中の亜鉛の濃度を変えることによって、6面の板状結晶から、複数に枝わかれした構造まで、雪の結晶の複雑さを制御することもできる。

「材料を切り取るというトップダウンアプローチでナノ構造を形成するのとは対照的に、このボトムアップアプローチは、原子の自己組織化に寄っています」とガストンはいう。「これは自然界でナノ粒子が作られる方法であり、トップダウンの方法と比べて無駄がないだけでなく、はるかに正確です」

研究は金属ナノ構造体への未踏の道をを開いたと彼女はいう。「金属で雪の結晶を作るのはとてもクールなことだと思います」

論文『Liquid metal synthesis solvents for metallic crystals(金属結晶のための液体金属合成溶媒)』は、Scienceに掲載されている。資料はオークランド大学から提供された。

forbes.com 原文

翻訳=髙橋信夫

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