重量70トンの戦車M-1は、120mm砲、高度な光学系、頑強な装甲、高馬力タービンエンジンを備え、ウクライナの戦場で最も洗練された戦車となるだろう。またそれと同時にM-1は、ウクライナ軍の乗組員、整備員、兵站部隊にとって大きな苦痛にもなるだろう。
「M-1は複雑な兵器システムであり、維持が困難であることはこれまでにも話したとおりです」と国防省報道官のパット・ライダー米国空軍准将が記者団に話した。「それは過去も、現在も、未来においても真実です」
General Dynamicsと米国陸軍が1970年代にM-1を設計した際、彼らはいくつか重要な決断を下し、それらが50年後、深刻な余波をウクライナに対して与えることになった。
設計チームは4人乗りのM-1に、他のほぼすべての装甲車両が採用していたディーゼルエンジンではなく、ジェットタービンエンジンを搭載した。1500馬力のハネウェルAGT1500タービンエンジンは、事実上どんな燃料にも対応することが可能(米軍は戦車にJP-8ジェット燃料を使用している)であり、M-1に高速性と完璧な加速性をもたらしている。M-1は道路上を時速72km以上で走行できる。
General Dynamicsと陸軍は、劣化ウラン(極度に硬い金属)をM-1の秘密装甲レシピに盛り込んだ。
さらにM-1設計チームは、角のある特徴的な砲塔に最先端の光学と砲撃のシステムを装備しただけでなく、砲塔が少なくとも現代の戦車並みの速さで回転できることを追求した。360度全周を9秒以内に回転することを。
これらをはじめとするさまざまな選択の結果でき上がったのは、高速で頑強に守られた、すばやく正確に砲撃できる戦車だった。欠点は、M-1 が同サイズのディーゼル駆動戦車と比べて2倍近く燃料を消費することだった。加えて、M-1は保守が極めて難しい。そして装甲部分に劣化ウランが含まれていることが輸出を複雑にしている。
M-1供与を発表した際、米国防省はどのバージョンの戦車を送り込むかを特定しなかった。4億ドル(約518億円)の戦車パッケージに120mmの砲弾が含まれていることから、主砲として44口径滑空砲を備えたM1A2であると考えられる。
しかし、米国陸軍部隊で稼働中あるいは兵器庫の中にある数千台のM1A2にはウラン製装甲が含まれている。国防省は政策方針として、劣化ウランを含む戦車を輸出したことがない。たとえばイラク、サウジアラビア、あるいはポーランドにM-1を売る時には、ウラン装甲部品のない特別バージョンを製造するようGeneral Dynamicsに依頼している。
ジョー・バイデン大統領政権が、既存の戦車を譲り渡すよう他の海外M-1ユーザーを説得できない限り、General Dynamicsは新たに脱ウランM-1一式を準備する必要があり、それには何カ月あるいは何年もかかるかもしれない。