ドイツがウクライナに歩兵戦闘車を供与、同国歩兵の心強い援軍に

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ウクライナ政府が要望すること数カ月、ドイツ政府はついにウクライナにマルダー歩兵戦闘車の第一弾の提供を約束した。

20ミリ自動砲、ミラン対戦車ミサイル、鋼鉄製装甲を備えた30トンの装軌車両はウクライナ軍の機械化歩兵にとって大きなアップグレードとなる。米国が提供するM-2ブラッドレー歩兵戦闘車とともに、2023年の大規模攻撃に必要な機動性、防御力、火力を持つのに役立つだろう。

米国のジョー・バイデン大統領とドイツのオラフ・ショルツ首相との電話会談の後、ドイツ政府は1月5日にこの決定を発表した。「バイデン大統領とショルツ首相は必要とされる経済的、人道的、軍事的、外交的支援を必要な限りウクライナに提供するという共有された決意を表明した」とドイツ政府は発表した。

「この目的のために、米国はブラッドレー歩兵戦闘車を、ドイツはマルダー歩兵戦闘車をウクライナに提供する。両国はそれぞれのシステムでウクライナ軍を訓練する計画だ」としている。

マルダー歩兵戦闘車は新しい車両ではない。実際のところ、世界でも古い部類に入る歩兵戦闘車だ。しかし、マルダーはその古さにもかかわらず速度、防御力、火力、性能のバランスから世界最高水準の歩兵戦闘車の1つだ。乗員3人と歩兵6人を乗せて時速64キロで走行することができ、ドイツ軍のレオパルト戦車に遅れずについて行き、銃撃戦の最中に歩兵を降ろし、大砲とミサイルで歩兵を支援することができる。

おまけにマルダーは信頼性が高い。特にドイツのプーマ歩兵戦闘車のような最新のものでさほど洗練されていない車両と比較するとそうだ。ドイツ軍は最近、北大西洋条約機構(NATO)の演習に参加していた18台のプーマ歩兵戦闘車が同時に故障したため、数百台のプーマ歩兵戦闘車の購入を一時停止し、一部を古いマルダーと入れ替えた。

マルダーのルーツは第二次世界大戦にさかのぼる。ドイツ軍は、戦車はたくさんあるが歩兵が少ないという編成では敵陣を突破することはできても、占領した地を維持することはできないということを身を持って知った。大量のソ連歩兵との戦闘でドイツ軍の戦車部隊はしばしば局所的に突破したが、戦車の勢いが鈍ると敵の歩兵に四方から圧倒されることになった。

ドイツ軍は戦車師団により多くの歩兵を加えたが、歩兵は高速で動く戦車について行くのに苦労した。戦後20年にわたり、ドイツ軍は歩兵を戦車戦に参加させ、兵士が降車して小走りでカバーを求める最初の数分間を確実に生き延びられる装甲車の実験を行った。

ドイツのラングHS.30歩兵戦闘車は1958年当時、今日の歩兵戦闘車の特徴である速度、装甲防御、砲塔搭載砲、後部出口のある歩兵コンパートメント(正面から攻撃を受けても歩兵は安全に車両から出られる)をすべて兼ね備えた最初の歩兵戦闘車だった。
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翻訳=溝口慈子

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