ロシアの傭兵部隊ワグネルはウクライナで戦闘機を失うばかり

Getty Images

12月2日に撃墜され、ウクライナ東部バフムト郊外のほぼウクライナ軍陣地に墜落したロシアの航空機メーカーSukhoi(スホーイ)の超音速爆撃機Su-24Mは、ロシアの悪名高い謎の傭兵会社Wagner Group(ワグネルグループ)と契約した2人のベテランパイロットが操縦していた。

このSu-24はロシアが2月にウクライナとの戦争を拡大して以来、ウクライナ軍が撃ち落とした少なくとも3機目のワグネル傭兵が操縦する戦闘機だ。ワグネルはSu-25も2機失っている。

この損失はウクライナ軍の防空がロシア軍の航空機にとって絶え間ない脅威であることを強調しており、またウクライナ上空でのロシア軍の作戦におけるワグネルの占める割合が大きく、そしておそらくその割合が増しつつあることも示している。

ワグネルが大規模な地上軍を展開するとき、自社の傭兵パイロットを古いロシア製の戦闘機のコックピットに乗せ、地上の兵士を直接支援するためにそうした戦闘機を飛ばしていることは明らかだ。

だがワグネルの航空作戦の法的、物流的、指揮的な枠組みは怪しいままだ。ワグネルは航空機を購入したり、レンタルしているのか。あるいは単にレンタルしているだけなのか。ロシア政府はワグネルのパイロットを直接管理しているのか、それとも傭兵会社が自社ですべての標的を選び、出撃すべてを計画しているのか。増え続けている戦闘で命を落とすワグネルパイロットの遺族に誰が補償するのか。

ワグネルがウクライナ上空での戦いに関与していることは遅くとも5月下旬に明らかになった。ウクライナ軍が携帯式の赤外線誘導ミサイルのスティンガーを発射し、ウクライナ東部ドンバス地域のバフムトの東約32キロのポパスナ上空でSu-25を撃墜したからだ。

英放送BBCは、ポパスナ周辺でのロシア軍の攻撃を支援しながらSu-25の操縦席で死亡した男性がカナマット・ボタシェフであることを確認した。

63歳のボタシェフは軍を引退していた。ロシア空軍の将軍だった2012年に操縦資格のないスホーイSu-27戦闘機を「レンタル」し、アクロバティックな飛行の末に墜落させて空軍を辞めた。引退後、ボタシェフはワグネルと契約したと報じられた。

1カ月後、ウクライナ軍の第72機械化旅団は肩に担いで発射できる防空ミサイルであるイグラで別のSu-25を撃墜し、この戦闘機を操縦していた高齢パイロットのアンドレイ・フェドルチュコフを捕らえた。フェドルチュコフは月3200ドル(約44万円)でワグネルと契約していたと尋問で明らかにした。
次ページ > ワグネルの航空隊は新しいようで、未熟かもしれない

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事