ドイツがウクライナに歩兵戦闘車を供与、同国歩兵の心強い援軍に

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だがラングHS.30歩兵戦闘車は人間工学的に問題があり、設計変更によって後部出口がなくなり、戦闘に使用できなくなった。そこでドイツ軍は急いでラングHS.30歩兵戦闘車をより洗練されたデザインのマルダーに取り替えた。

ドイツの軍需メーカーであるラインメタルは、1969年から2000両以上のマルダーを製造した。2010年代にはアフガニスタン西部で戦闘があったが、当初はエアコンがなく、車両にとして理想的な環境ではなかった。しかし、ドイツ軍はマルダーが持つ装甲と火力を高く評価した。

ドイツ軍は現在も300両超のマルダーを保有しており、新型プーマ装甲歩兵戦闘車の問題もあって長く保有する可能性がある。ドイツ国内には数百台のマルダーが保管されている。ロシアが2022年2月にウクライナに戦争を仕かけてほどなくしてウクライナの当局者はドイツに問い合わせ始めた。

ウクライナ軍は当時も今も歩兵戦闘車が圧倒的に不足している。陸軍の24の機械化旅団はそれぞれ少なくとも100両の戦闘車両を必要としているが、戦前の在庫はわずか1000両だった。そのほとんどが旧ソ連製のBMP-1で、マルダーとほぼ同じ年式ながら防御力は低く、軽い砲弾を低い圧力で撃ち出す低圧砲を装備しているため、激しい戦闘では役に立たないとの見方が多い。

ラインメタルはドイツ政府がマルダー提供を約束することを予期して、昨年秋から長い間保管されていた車両の修理を始めた。だがドイツ政府はどうやらロシア政府がマルダーの提供を「エスカレート的」な動きと見なすことを恐れたようだ。この戦争はロシアが勝手にエスカレートさせているのだが。

ウクライナのドミトロ・クレバ外相は失望をあらわにした。「この兵器がなぜ提供されないのか、合理的な議論は1つもなく抽象的な恐怖と言い訳だけだ。ドイツ政府が何を恐れて、ウクライナ政府が何を恐れていないのか」

ドイツ政府の歩兵戦闘車供与に対する抵抗は、米国の歩兵戦闘車供与に対する抵抗がなくなった後、ようやく消えた可能性がある。バイデン政権は2023年1月、数千の余剰M-2ブラッドレー歩兵戦闘車のうち最初の50両をウクライナに供与することを明らかにした。マルダー供与の決定は、M-2を供与することがマスコミに漏れてわずか数日後に行われた。

突然の戦闘車提供の背後にある政治的な理由が何であれ、ウクライナ軍はもちろん感謝し、安堵していることだろう。初冬の冷たい泥がウクライナの攻撃を鈍らせた。だが今月中に地面が凍れば、再び作戦が可能になる。

ウクライナ軍が新しく提供される古い歩兵戦闘車をいくつかの旅団にどれだけ早く配備できるかはわからない。ひとたび配備されれば、これらの旅団がウクライナ政府が計画しているあらゆる攻勢をリードすることが予想される。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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