自衛隊関係者らに聞いてみると、3大戦車の威力はすさまじい。旧型ではあるが、1991年の湾岸戦争でエイブラムスはイラク軍のソ連製T72戦車を次々、撃破した。松村五郎元陸将も「レオパルトは、ロシアがウクライナに多数投入しているT72はもちろん、T90戦車とも互角かそれ以上の戦いをするでしょう」と語る。戦車は3~4両で1個小隊を作る。小隊が3個で1個中隊というように数を増やしていく。100両以上あれば、師団規模での戦闘にも十分活用できるという。
こうしてみると、ウクライナ軍が一気にロシア軍を蹴散らしてしまう高揚感にとらわれそうになるが、物事はそれほど単純でないようだ。戦車部隊の指揮官を務めた高田克樹元陸上総隊司令官は「私が指揮官なら、航空戦力の支援を求めます」と語る。戦車だけ投入しても、戦車対戦車の消耗戦に陥る危険性があるからだ。戦車戦になだれこむ前に、航空機によるスタンドオフ攻撃や長射程の対地精密誘導兵器、砲迫によりロシア軍の補給基地や防空能力を攻撃し、火力と機動の連携を充分に図る必要があるという。
ただ、NATO諸国は、ウクライナに対する航空戦力の提供を拒んできた。いうまでもなく、戦線がNATO諸国に拡大することを恐れてきたからだ。今回の戦車提供を巡っても、英国に比べ、ドイツと米国が慎重な姿勢を示してきた。
関係国のウクライナに対する支援も、常に積極的だったわけではない。昨年6月、ドイツ・エルマウで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、ウクライナが必要とする限り、支援を継続するとした共同声明を発表するなど、各国は前向きな姿勢をみせていた。だが、同年9月に、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスの海底パイプライン「ノルドストリーム」が爆発で損傷した。スウェーデンの検察当局は爆破工作としている。ロシアによるガス供給の削減圧力も強まった。各国に支援疲れも広がった。米共和党のマッカーシー下院院内総務(当時)は10月、中間選挙で同党が過半数を獲得した場合、ウクライナに「白紙の小切手」を渡すことはないとの考えを示した。