もちろん、NATO諸国もウクライナへの同情心だけで支援に応じたわけではない。ドイツは戦車提供にあたって、米国も支援に応じるべきだという姿勢を貫いた。松村氏は「ドイツはロシアと直接対峙することを避けたい思惑のほか、停戦交渉が始まった際に有利な立場で参加したいという思惑もあったでしょう」と語る。高田氏も「みな独立国ですから、自国の利益を追求するのは当然です」と話す。
その結果が「戦車連合」だ。ウクライナには、米エイブラムス、独レオパルト、英チャレンジャーという3大戦車と旧ソ連製のT72が混在する。エイブラムスだけはジェット燃料を使うガスタービンエンジンだ。軽油を使うディぜールエンジンを搭載した他の戦車と異なる。松村氏によれば、戦車にはそれぞれ射撃装置や車体の強さなどに違いがあり、「エイブラムスで欠員が出たから、レオパルトの乗員をすぐに回せ」という訳にはいかないという。3大戦車は、部隊にいる他の装甲車の位置を把握して連携できる戦闘指揮システムを搭載しているとみられるが、英米独で使用する周波数が違うため、連携は簡単ではない。
ウクライナとNATO諸国が、それぞれの国益を最大限に追及した結果が、今回の「戦車連合」につながったと言える。高田氏は「ウクライナ軍の将来を考えれば、良いことではありません。現代では、一国で平和は守れません。同盟関係のない国がどのような運命をたどるのかを、ウクライナ軍の姿が如実に示しています」と語る。
岸田文雄首相は2月にもウクライナを訪問することを検討しているという。G7議長国として訪問には政治的意味があるだろう。ただ、日本が現在できることは、「戦後の復興支援を約束することくらい」(松村氏)とみられる。日本国内には「戦車提供ではなく、この機会に平和を訴えろ」という声もある。果たして、NATO諸国とぎりぎりの交渉を繰り広げたゼレンスキー氏は、どう答えるだろうか。
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