政治

2023.01.30

ロシア軍、ウクライナの大砲の位置を音で特定するスマホアプリ開発を主張

Getty Images

ロシア軍は100年以上前の第1次世界大戦で初めて使用された技術を復活させて、ウクライナの大砲の位置を特定するネットワーク化されたスマートフォン向けのソフトウェアを開発した。

ロシアとウクライナの紛争では、砲撃戦が重要な要素となっている。高機動ロケット砲システム「HIMARS」によって弾薬の備蓄が破壊されたこともあるが、砲撃戦と誤解されているもの、より正確には対砲兵砲撃でウクライナが優位に立ったため、ロシアの当初の圧倒的優位は大きく損なわれた。一方の側から砲弾が発射されると、他方はその発射位置を特定して自軍の砲弾で破壊しようとする。

砲撃の探知には飛んでくる砲弾を見つけて弾道を解析し、発射地点までたどれる対砲兵レーダーが好んで使われる。対砲兵レーダーは希少で高価だ。最新の米国のシステムは1つ1200万ドル(約15億円)以上もする。だが砲弾が着弾する前でも発射位置をを割り出せる。米国と英国はウクライナに対砲兵レーダーを提供し、ロシアは独自の対砲兵システム「Zoopark-1」を保有している。しかし、どんなレーダーにも大きな欠点がある。レーダーの発する電波で探知されるため、位置を特定されて砲撃の標的になる可能性がある。双方とも対砲兵レーダーを探知して破壊してきた。

それゆえに以前の技術に戻る必要がある。重砲が発する音と閃光は何マイルか離れたところからでも明らかで、第1次世界大戦中には音と閃光の測距を行うさまざまなシステムが生まれた。雷や稲妻と同じように、光の速さで進む閃光は5秒間に約1マイル(約1.6キロメートル)しか動かないため、轟音が聞こえるずっと前に目にすることができる。正確な時間を記録した複数の観測者のメモを比較することで、発射台の位置を三角法で測ることができるが、このシステムはあくまでもおおよその位置を特定するものだった。

X線回折の研究でノーベル物理学賞を受賞したウィリアム・ローレンス・ブラッグは1915年に音響測距に革命を起こした。ブラッグは英陸軍のために、広く間隔を取って配置されたマイクを使って遠くの銃声を検流計で自動記録し地震計のようにロールから広げられた紙にペンで手がかりを残せるようにした。ブラッグのマイクは古い弾薬箱を布に包み、風などの高周波ノイズを除去したものだった。これで最終的には10メートル以内にまで発射位置を特定することができた。
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翻訳=溝口慈子

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