ハリントン元難民担当閣外大臣によると支援疲れではなく「受け入れ疲れ」という言葉ならばあるということだった。さて、では実際にイギリスの統計の数字を見てみよう。
例えば、世論調査会社「ユーガブ」の9月の調査では、「ロシアの勝利の可能性を高めることになっても、ウクライナへの支援の一部または全部を取りやめ、イギリス人の生活と支援をもっとすべきだ」と答えた人が38%いた。
一方、12月にシンクタンク「モア イン コモン」が主導した調査では「イギリスへの経済的影響の大きさがウクライナ支援の縮小を正当化できる」と考える人はわずか18%だった。
この2つの調査はタイミングや聞き方は異なるが、ほぼ同じ内容を聞いたものだ。9月から12月、冬が近づくこの時期に、エネルギー危機への懸念が強まり価格上昇への不安が増大しているのに、12月の調査の方が、よりウクライナ支援に重きを置いた回答が得られている。
それを解き明かすヒントになるデータがもう一つある。ハリントン氏が指摘した「ウクライナ受け入れ疲れが顕在化している」かもしれないポーランドのデータだ。
ポーランドの調査会社CBOSによるウクライナ情勢に関するポーランド国内の世論調査によると、ロシアによるウクライナ侵攻直後の3月時点で「ウクライナ難民を紛争地域から受け入れるべき」と思う人が全体の94%にも及んでいた。
しかし、徐々にその割合は減っていく。4月 91%、5月 89%、6月 82%、7月 84%、8月 81%、9月 79%、10月 76%。確かに「ウクライナ支援疲れ」がじわりとじわりと広がってきたと述べることができるように見える。
しかし、11月には「ウクライナ難民を紛争地域から受け入れるべき」という割合が再び増加し83%となった。「受け入れを支持しない」人の割合も10月の17%から、11月には12%に減少。これは、先程比較した英国の2つのデータの間、9月から12月に起きた出来事につながってくる。
この間に何がおきたかというと、11月15日のポーランドでのミサイル着弾だ。ウクライナとの国境付近のポーランドの村・プシェボドフにミサイルが落下し、2人のポーランド人が亡くなったニュースを覚えているだろう。ロシアのミサイル攻撃に対してウクライナが放った迎撃ミサイルが誤って落ちた可能性が高いようだが、最終的な調査結果はこれからなので詳細は割愛する。
ポーランド着弾の現場 プシェボドフ村の規制線