終わらぬ戦争 欧州で「ウクライナ支援疲れ」は広がったのか?

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──難民担当大臣としてウクライナ難民受け入れに際し、どんなことををしたのか

ボリス・ジョンソン氏が首相だった3月、彼はウクライナ政府に「イギリスは無制限のウクライナ難民を受け入れる」と約束した。しかし難民を受け入れ再定住させる仕組みは考えていなかった。

私は2019年の選挙で身を引き政治家を引退していたが、ジョンソン元首相から電話があり「過去に難民受け入れ制度を作った経験を生かすときだ。戻ってきてほしい」と言われた。私はキャメロン政権下で、2万人のシリア難民の再定住の施策を担当したからだ。

ただシリア難民は現在のウクライナ難民とは全く別だった。長年の間、迫害と悲劇の下に生き戦争が起きて、周辺国のレバノン、トルコ、ヨルダンに逃れた後に、できるだけ遠くへとイギリスにやってきていた。彼らにとってシリアに戻ることは考えもしないことだった。

しかしウクライナの難民の人は今回の避難を“一時的な移住”とみなしていることがすぐに分かった。ただ一時的なものであっても、完全にもてなし、社会に必要なすべて、例えば健康、教育、働けない場合の手当などを完全に利用できるプログラムを考えなければならない。私たちは宿泊施設にあまり余裕がなかったため、一般家庭で受け入れるスポンサーシップ・プログラムを行うことにした。

これはカナダから学んだことだ。「あなたの家の空き部屋や空きスペースを提供していただけませんか」と呼びかけたら、21万もの人が協力してくれて、既に10万人以上のウクライナ人がイギリスに来ている。
 
──「ウクライナ支援疲れ」という言葉についてどう考えているか

実際の表現として受け入れ疲れ(Host fatigue)と呼ばれるものなら存在する。ポーランドなど実際に何百万人も受け入れてきた国では、それがより顕著だ。これらの国では多くの場合、ソ連時代のような箱型のアパートが多く、もともと非常に窮屈な環境で生活しているというのもある。

しかし、イギリスはそうではないため受け入れ疲れにもなっていない。当初、受け入れ家族は6カ月間の滞在を約束するよう求められた。法的な契約ではなく、モラルのようなものだ。そして今ほとんどの受け入れ家族は6か月が経ち、75%が継続を希望した。

継続を希望してもらえなかった残りの25%に該当するウクライナ難民はどうするか。21万人が協力を申し出たと言ったように、受け入れをできる家庭が他にもたくさんある。他の家庭への再マッチングと呼ばれる方法で移動できている。
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文=中村 航

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