この言葉が使われる背景をメディアで働く身として自戒を込めて書くと、日本では開戦当初に集中的にニュースを報じ「ロシア・ウクライナ戦争慣れ」をしてしまったからだと思う。だから、より分かりやすいフレーズで、これまで伝えてこなかった側面を伝えたくなる。これはメディアの性ともいえる。そこで「支援疲れ」が出てきたのだ。
この「慣れ」については欧州も変わらないのだが、支援を辞めることがいかに大きな意味を持つのかを誰もが理解しているという点で、日本とは大きな差があるように思える。だから安易には「支援疲れ」という言葉を使わない。
今回は欧州のウクライナ支援の姿勢について、現場での取材とデータを交え検証したい。
支援疲れの理由に挙げられるのがエネルギー価格の上昇を始めとした「急激なインフレ」だ。イギリスではCost of living crisis(生活費危機)という言葉が毎日テレビや新聞の見出しとなり、ここ最近はwinter strike(冬のストライキ)という言葉が連日メディアを賑わす。
12月は毎日のように何かしらの職種でストライキが実行され、新聞にはストライキカレンダーまで載っている。ついには看護師たちが全国的なストライキを敢行した。看護師らの労働組合「王立看護協会」として100年以上の歴史上で初めての全国ストライキだという。
物価上昇率が前年比で10%を超える中、それに見合った賃上げを求め、郵便事業者、鉄道会社など社会のインフラとも呼べる多くの労働者たちが次々と声を上げているのだ。
イギリス看護師ストライキの様子
ストライキに参加する労働者に話をきくと、もちろんその目的は経営者への賃上げの要求、労働環境の改善だ。ウクライナ支援への恨み言を吐いている人に出会うことはまずない。多くの人にとって、ウクライナ支援を続けるのは大前提、つまり所与のものとしてとらえられ、その上で彼らは自分の生活が直面する問題に立ち向かっている。
それでは一体、巷間言われる「ウクライナ支援疲れ」はどこから来るのだろうか。ロシアによるウクライナ侵攻が起きた直後に、イギリスの一般家庭でウクライナ難民を受け入れる「ホームズ・フォー・ウクライナ」の制度をつくったリチャード・ハリントン元難民担当閣外大臣に話を聞いた。