2020年の食品支出は、家庭用食品(スーパーマーケット、コンビニエンスストア、倉庫型クラブ、スーパーセンター、その他の小売企業から購入した食品)が大半を占めました。その後、この傾向は2021年には逆転し、消費者の流動性とパンデミック前の生活に戻る動きから、家庭外食品(レストラン、ファーストフード、その他の飲食店から購入した食品)の売上を押し上げ、外食需要の強さと回復力が浮き彫りになりました。
当社ではUSDA(アメリカ合衆国農務省)のデータを基に、小売から外食への持続的な食費のシフトは10年を通じて続き、外食の割合は2030年までに56.3%に達すると推測しています。これは、外食する価値のある店内体験の開発、および利便性、手頃な価格、栄養、料理の専門知識を強化する食品サービスの選択肢の拡大があると思われるからです。
図4. 米国の総食品支出:家庭内食費と外食の割合
※備品、寄贈、自家製、教育機関で提供される食品を除く
出典:USDA/Coresight Research
インスタントコマース市場は1000億円以上に成長
食料品や生活必需品を1時間以内、あるいは10分以内に消費者に届けるサービスのインスタントコマースは、パンデミックによる消費行動の変化の長期化により、かつてないほどの盛り上がりを見せています。パンデミックの間、都市部を中心に、10分から30分で配達を行う垂直統合型のインスタントコマース業者が乱立しました。
Coresight Researchでは、米国におけるインスタントコマース市場は、2025年までに450億ドル、2030年までに1000億ドルを超えると推定しています。成長の主な要因としては、消費者が利便性の高い購買を重視し、毎週または毎月の大量購入ではなく、頻繁に少量を購入するようになると思われることです。このチャネルは、無計画な購入や買い足しニーズのある、利便性を求める若年層により広く普及すると思われます。
消費者がインスタントコマースを日常の買い物習慣に取り入れるにつれ、Eコマース売上全体に占める食料品のシェアは拡大していくでしょう。インスタントコマースのプレイヤーは、都市部以外の市場で新たな消費者層を獲得し、提供する商品カテゴリーを消耗品からアパレル、家電、DIY製品、ハードウェア、小型家電などに拡大していくことが予想されます。各社は、小売企業との調達提携、プライベートブランドや惣菜の展開、ピッキングや配送の自動化など、様々な手段で事業を拡大していくことが予想されます。
一方で、これらのプレイヤーの多くは、自社間で統合した後、大手配送事業者や実店舗を持つ小売企業に吸収されることになる可能性もあるでしょう。
図5. 米国インスタントコマース市場:潜在市場規模(10億米ドル)およびCAGR(%)の予測
出典:Coresight Research