2. 人口動態、行動様式の変化
単身世帯の増加、高齢化
高齢化と単身世帯の増加により、食料品小売需要の動向は変化することが予想されます。国勢調査局のデータを基にしたCoresight Researchの分析によると、2030年までに単身世帯は米国の総世帯の31.3%を占め、2022年から680万世帯増加します。単身世帯は、まとめ買いをせず、少量ずつ高頻度で購入する傾向があり、また、短時間の移動を好み、小規模な店舗形態が受け入れられやすい傾向があります。更には、一から料理を作ることが少ないことから、小売から店内消費への移行が進む可能性があります。
高齢化の面では、米国国勢調査局のデータを基にすると、2030年までの10年間で、65歳以上の人口が米国人口増加の4分の3を占めることが予測されます。高齢化社会では、買い物習慣や食生活が変化し、利便性や介助の必要性が高まります。単身世帯と同様に、少量を購入する傾向があり、調理にあまり手間のかからない食品を好み、店舗に行く回数は少なくなります。そのため、小規模店舗や地域密着型店舗の増加、ECによる宅配便の利用拡大が予想されます。
また、少量包装の需要増加によって固定費のレバレッジが低下する恐れがあるため、利益率を低下させない方法を模索する必要があるでしょう。
図6. 米国の単身世帯と65歳以上人口(単位:千人)
出典:米国国勢調査局/Coresight Research
人種的多様性の増加
多文化な人口動態の変化も、米国の食料品小売市場に大きな影響を与えるでしょう。Coresight Research では、2030年までに米国のヒスパニック系人口は約950万人、アジア系米国人は330万人、アフリカ系米国人は320万人増加すると予測しています。
これらの人口動態の変化は、Targetのような多様な顧客層を持つ小売企業を支えることになるでしょう。また、他の主要な食料品店も、エスニック製品の拡大を優先し、幅広い品揃えを、より豊富に取り扱うようになるでしょう。こうした商品を単一または特定の棚に限定するのではなく、各店舗の各通路に追加し、ブランドの可視性を高め、ショッピング体験を向上させる必要があるとみています。
エスニック商品への需要の高まりは、専門スーパーを拡大させ、国際的な小売企業、特にラテンアメリカの小売企業が米国で事業を設立または拡大させるきっかけになると思われます。これらの企業は、国際市場で成功したブランドを展開し、非白人層を入り口としてターゲットを拡大し、その後、新しい味を求める他の消費者層を取り込んでいくことになるでしょう。
図7. 米国のアフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人の人口(単位:千人)
出典:米国国勢調査局/Coresight Research