食料品小売企業の収益増の主な要因は人口増加とインフレになりますが、これは、商品よりもサービスへの支出増といった構造的な変化に支えられ、小売から外食への持続的な食品支出の転換によって相殺されることが予想されます。また、2030年の売上は、M&Aによる構造転換により、国内大手の食料品小売企業に集中すると思われます。
本記事では、2030年までの米国食料品小売市場における市場規模、チャネル、消費者行動、商品、技術などの定量的予測と各分野の動向について説明していきます。
図1. 米国食料品小売市場の市場規模(10億米ドル)とCAGR(%)の推移
※食品小売企業の全商品売上と、特定の大手量販店、ウェアハウスクラブ、ディスカウントストアの食料品売上を含む。
出典:Coresight Research
1. チャネルについて:小売業を形作る構造的変化
オンラインへのシフト:多様な商品提供により700億ドル規模の急成長へ
Coresight Researchでは、2030年までに食料品Eコマースの売上は2022年の2倍近くになり、市場規模は1470億ドルに達すると予測しています。2022年から2030年にかけてのオンラインチャネルの成長率は、米国の食料品市場全体の成長率を上回り、CAGRは8.4%になると思われます。2030年までに、食品と飲料の売上は約700億ドル増加し、オンライン普及率は9.0%に達するとみています。これは、経済分析局(BEA)のデータから予測した食品小売支出1兆6千億ドルに匹敵します。
Eコマースは、パンデミックの期間中に急速に広がり、小売業企業は需要の高まりに迅速に対応し、驚くほど短時間で生産能力を高めました。このチャネルは、2年間続いた著しい成長の後、2022年に若干の是正が行われていますが、長期的な成長ポテンシャルは損なわれていません。今後数年間は、フルフィルメントの自動化や集配能力の増強など、店舗機能と顧客の利便性を向上させるための投資が継続されることが予想されます。
同時に、オンラインサービスの差別化が進み、即時配送、当日配送、定期配送などの配送オプションや、補充やフルバスケットでの提供など、さまざまな消費者層や買い物方法の多様なニーズに対応するようになるでしょう。
図2. 米国食料品オンライン小売市場規模(10億米ドル)およびCAGR(%)
※オンライン食料品売上は、BEAが定義する小売における食品および飲料に対する消費者支出をベンチマークとしている
出店:IRI E-Market InsightsTM/Coresight Research