大規模な実店舗を運営し、資本力のある大手小売企業は、ラストワンマイル・ロジスティクスを内製化し、サードパーティに頼っていたプラットフォームから離れる事が予想されます。また、既にこうした内製化に戦略的に投資してきた小売企業は今後、配送・集荷サービスのコスト削減のために、自動化に投資するようになるでしょう。
更には、オンライン事業の規模拡大のために、クイックコマース、Eコマース、サードパーティ配送プロバイダーと共にジョイントベンチャーを設立したり、株式の大幅な取得も予想されます。その他の小売企業は、自社配送サービスを限定的に運用しつつ、サードパーティと提携しながら配送範囲拡大を実現するという、ハイブリッド型のアプローチを取ることが予想されます。
InstacartやDoorDashのような配送プラットフォームは、小売企業向けのホワイトレーベル・ソリューションの提供に軸足を移すことが予想されます。消費者との取引に加え、Eコマースのインフラを小売企業へ販売することで、この分野での売上は物流部門の売上を上回る可能性があります。
また、自社でプラットフォームを運営している小売企業も同様に、地域や独立系の食料品店に対して、オンライン注文やフルフィルメントに関するホワイトレーベル・サービスの提供を行うことが予想されます。
オムニチャネルで競争するために進化する実店舗の役割
実店舗は今後も、食料品購入における大切なチャネルであり続けるのは間違いありません。しかし、Eコマースへの構造的な移行が実店舗へ大きな影響を与える可能性が高いのも事実です。Eコマースを通じた購入が増加するにつれ、必然的に実店舗での売上は減少し、一部の店舗では採算がとれなくなり、店舗数の縮小が余儀なくされるでしょう。
当社では、生き残る店舗は、特に過剰なサービスを提供する場合において、より高い収益性が期待できると考えています。小売企業は、大型店舗の一部をダークストアとして再利用し、オンライン注文に対応する可能性もあります。また、棚置きの商品をオンライン・フルフィルメントに対応させることで、生鮮品や生鮮食品により多くの店舗面積を割り当てることができるでしょう。
店舗の一部を体験型店舗へと変革させ、顧客エンゲージメントを高めようとする小売企業もいるでしょう。こうした店舗では、買い物のニーズに応えるだけでなく、試食やワインの試飲、料理教室、栄養士による栄養相談、店内飲食サービスなどを通じて、単に買い物する場だった店舗を、発見や交流、インスピレーションを得られる、興味深い、楽しい活動に変えるような、“体験”を提供する場になることに重点を置くようになるでしょう。
より高い顧客体験を構築し、共通の趣味をもつ仲間集めることで、店舗滞在時間を延長させ、店頭での売上を促進することができます。これは、店内レイアウトが、商品の配置よりも顧客体験を重視したものに変わっていくことも意味しています。