ビジネス

2022.11.28

なぜ「マーケティング部」がある組織はダメなのか

オルビス社長の小林琢磨(左)、グロースX社長の津下本耕太郎(右)(撮影=小田駿一)

津下本:これからは、絶えず顧客理解をアップデートしながら、LTVを最大化できる会社が勝つと思います。売り上げはあくまで結果なので、広告のような短期的な手法により過ぎず、顧客にちゃんと価値が提供できているか、に紐づいた「予知指標」を解像度高く、設計できている。それが経営手腕なのではないか、と思うのです。

僕もいまの会社では、受注目標を設定していません。営業の社員がお客さまを幸せにすると思ったらクローズしてきて、と話をしている。クローズレートが悪いのは、商談の悪さもあるかもしれませんが、そもそもの弾(プロダクトが提供している価値やマーケティング)の悪さです。僕も昔は「ファネルを逆算しろ」という感じでプロセスを細かく管理していました。売上高から逆算し、短期受注の指標を出し、テレアポの数をカウントして、という感じです。

ただ、いまは、顧客体験がよくないと事業が持続可能ではないという時代で、顧客体験を磨き続けることこそが結果につながると言えます。「お前ら結果だせ」と社員に言うのではなく、「お客さまを感動させられないから結果がついてこない」という捉え方をした方こそ、会社が明るくなる。その伝え方が経営上重要だと。それがいまの小林さんの話に近いと思っています。

時間という観点では、顧客が購入するのは氷山の一角で、99%は購入以外の時間ですから、そこを徹底的に磨いていくというのが差につながるなと。

組織の「頭が揃う」と生産性が向上する


── 組織のマーケティングリテラシーはどうしたら高まるか。

小林
:「マーケティングは会社全体で行う」という組織文化になれば、リテラシーを高めようという意識になりますよね。その意識がとても大事で、プロセスをどうするか、ソリューションをどうするか、とマーケティングに関することの発信を経営者が増やしていくことでしょうか。

だから、まさにマーケティング人材の育成、グロースXのような存在が重要だと思います。結局、共通言語で議論できないと、全員で同じ目線での議論になりません。反対に、共通言語や共通理解の細かいところが全部揃った時、つまり、「頭が揃う」と一気に議論の生産性が高まりますね。

津下本:言葉の定義がバラバラという組織も多いですね。たとえば、リピート顧客、顧客の継続という言葉だけを見ても、ロイヤルユーザーを思い浮かべる人もいれば、たとえばダイレクトマーケティングでは2回目の購入が一番の壁なので、2回目の購入をイメージしている人もいる。この定義がばらつくと議論の解像度があがりませんし、会議は上滑りします。言語、指標を揃えるのは、マーケティング現場ではとても重要です。
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文=山本智之 写真=小田駿一

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