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ダイソンのオフィスにある名品たち。その理由とは

入り口から広がるオープンスペースに、数々の最新製品が並ぶ。ダイソンの日本オフィスは、多くの人が行き交うフロアの中心にギャラリーさながらの製品展示エリアを設けている。その中に、あきらかに異質な存在があった。同社の製品と同じように並べられ、新品同様の輝きを放っている。ホンダのスーパーカブ C90、そしてソニーの初期型ウォークマンだ。

それらはなぜダイソンの製品と並び置かれているのか。ダイソンで日本の品質部門を統率するジェームズ・シェールにその理由を聞いた。

エンジニアたちへの刺激


「私たちは〈デザインアイコン〉と呼んでいます」

ジェームズ・シェールによると、スーパーカブ、ウォークマンの名品たちをそう呼び、特別な存在として位置付けているという。

初期型ウォークマンの展示

「革新的なデザインが身近にあることで得られる視点やヒントをダイソンでは重要視しています。革新的なデザインというのは、私たちの生活を一変させ、他とは違う考え方を伝えてくれる。だからこそ、ダイソンのオフィス内には、技術やエンジニアリングで新しい視点を促すデザインアイコンが設置されています。技術によって時代を築き、人々のより良い生活を創り出してきたモノの象徴であり、ダイソンの社員やエンジニアたち全員が、先人エンジニアへの尊敬を忘れないための存在です」

エンジンを小型化しつつ実用的で悪路に強い万能バイクを実現したスーパーカブ。室内で楽しむことが主流だった音楽を手軽に携帯できるようにしたウォークマン。この2品は、ダイソンの掲げる「DISRUPTIVE DESIGNS(常識を覆すデザイン)」というコンセプトに基づく成功例として、創業者兼チーフエンジニアのジェームス・ダイソンがが以前から特別な思いを持っている。

「デザインアイコンはダイソンの社員が目の前の問題解決に取り組むためのエールの意味合いも持っています。というのも、身近に置かれたデザインアイコンは、エンジニアたちが考えに行き詰った際のインスピレーションの種になりうるからです」

スーパーカブの展示の様子

たしかに、何気なく行き来するオフィスの中心に、先人エンジニアたちがイノベーションを起こした名品があったなら、仕事で壁にぶつかったときにそれを乗り越えるきっかけがつかめるかもしれない。

ダイソンのエンジニアが斬新な製品を生み出している背景に、ジェームズ・ダイソンが創業時から大事にしている「他者が見過ごす問題をエンジニアリングや技術で解決する」という理念がある。視界に入るデザインアイコンたちが、彼らにセレンディピティを与える役割を果たしているのだろう。

文=上原純 写真=西川節子

ダイソン

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