爆速改革で大事にした顧客視点
──なぜそれが実現できたのでしょうか。
小林:ディセンシア時代に、客観的な視点で、かつ、グループ会社のため多くの情報があるという近い環境でオルビスを見ることができていました。それに加え、17年にマーケティング取締役として1年だけ取締役として経験して社長に就任していることも大きいです。
「構造改革する必要がある」と思ったのは、会社のすべての起点がカタログになっていた点です。カタログ通販の会社で、毎月180万部カタログ本を印刷し送付していました。ですから、すべて「カタログでいかに訴求するか」が中心で、カタログ用に撮影した写真がWebに転用されても映えていない。カタログ中心で、ネットは“ついで”、全然WEBフレンドリーではない、という問題がありました。
もうひとつは、チャネルが分断されていた点です。通販事業部、店舗事業部があり、担当役員も部長も別で、同じブランドにも関わらず、通販と店舗のキャンペーンが違うという状況でした。成長していた時代であれば、カタログ通販で買うお客様と店舗で買うお客様は被っていませんでした。ですが、いまは違います。
今日は買い物がしたい気分だからと店頭に行くという時もあれば、クレンジングがなくなるからすぐに届けてほしいと寝る前にスマホで注文する時もある。お客様がこれらを行き来する時に、全く違う視点でマーケティングするのはよくない。企業視点では、通販と店舗は別と言っても、お客様からしたらひとつのブランドです。「企業視点からお客様視点に変える」ことに着手し、実行してきました。
── 「顧客視点に変える」という考えはこれまでのキャリアの影響も大きい。
小林:それはありますね。ディセンシアは、最初からEC、いまでいうDtoCで立ち上げたこともあり、基本的にはユーザーがデジタルであるというのは当たり前の感覚でしたから。
津下本:ディセンシアは100%、自社での販売でしたか。
小林:売上高50億円くらいでしたが、100%自社でした。ドラックストアなどへの卸はすべて断っていました。ブランドコントロールと利益率の観点。さらに、お客様が見えなくなる点で、です。敏感肌用の化粧品で、悩みが深いお客様だったので、見えなくなるのが嫌だった。徹底的にLTVを意識していましたから、ディセンシアは、アクティブな既存のお客様のLTVが年間7万円を超えていました。売上50億円で営業利益10億出すというモデルでした。
津下本:年間7万円は強烈ですね。