ジェンダーギャップのある社会で、「こうあるべき」に縛られない選択をするために丨ジャーナリスト 浜田敬子

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時短勤務で働く中、職場や子どもに対して心のどこかで「申し訳ない」と罪悪感を抱き、仕事にやりがいが見出せず、心身が疲労し、子育てとの両立が困難で仕事を続けていく自信がない。

そんな働く女性、個人の悩みには、ジェンダーギャップがいまだ世界最低レベル(世界経済フォーラムが2022年に発表した日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中116位)の日本の社会構造が紐づいています。

まだまだ根強く残る「家事育児を担うのは女性」といった性別役割分業の意識。企業の採用・昇進・抜擢におけるアンコンシャスバイアスと統計的差別。そもそもチャンスと経験が少ない女性自身による過小評価。

ジャーナリストの浜田敬子さんにお話いただいた〈前編〉では、私たちを取り巻く社会構造が見えてきました。続く後編では、「明日 わたしは柿の木にのぼる」代表の小林味愛が聞き手となって、浜田さんと、ジェンダーギャップがある社会で「こうあるべき」に縛られない選択をするために、私たち一人ひとりにできることを考えます。

*TOKYO創業ステーション TAMA Startup Hub Tokyoで開催されたイベント「『こうあるべき』に縛られない自分らしい人生の選択肢」の内容を前後編に渡ってお届けします。


男性の育休取得は、組織の中、そして個人の中に多様性を生む


小林:浜田さんのお話を伺って、共感というか、自分も割と典型的な道を辿ってきたんだなと振り返って思いました。私は2010年に国家公務員として働き始め、入局3年目に女性活躍に優れた企業を選定する「なでしこ銘柄」が始まった世代です。

それでも当時は、長時間労働をしないと負けると思っていたし、小さな競争に勝たなければと思い込んでいました。すべてを犠牲にして働かないと評価されないんじゃないか、一人前とみなされないんじゃないか、という恐怖があって必死でした。

衝撃だったのが、入社当時、男性の先輩から「女性で私大卒は初めてだ」と言われたこと。私大卒の男性はいるのになんで!?って。学生時代まではジェンダーギャップをあまり感じていなかったので、女性であることが不利に働くのかもしれないと感じ取ったとき、男性よりがんばらないといけない、負けられないって気持ちが強くなった。それで、長時間労働の激務を重ねた結果、体調を崩してしまったんですね。

その後起業をして、現在3歳の娘と0歳の息子の子育て中なんですが、産後も仕事に集中できているのは、夫がそれぞれ1年間の育休を取得しているからなんですね。男性が家庭に入り、家事育児を分担することで、女性が社会で働く幅が広がる、と実感しています。

夫が育休を取ってみて改めて感じるのは、これまで男性が家庭に参入してこなかったことで、家事育児をするうえで逆に差別を受けるというか、生きづらい部分があるということ。たとえば、産後に助産師さんが自宅訪問をしてくれた際、「ママの話を聞きたいので、パパは外に出てもらえませんか」と言われたんですよ。

「うちはパパも一緒に育児をしているのでパパの話も聞いてもらえませんか」と返しても「決まりなので」と。育児をするパパも産後うつになるかもしれないのに、社会的なサポートはされない制度設計になっている。そうした点も改善されていくといいな、と思います。
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文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

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