女性がぶつかるキャリアの壁。その背景にあるジェンダーギャップはどう解消する?

白河桃子

働いているのに生活がままならない。仕事と子育てに追われて毎日くたくた。このまま仕事を続けられるのだろうか。

働く女性がぶつかる壁の背景には、ジェンダーギャップが開いた日本の社会構造、男性を基準とした働き方がある。

長年女性のライフキャリアをテーマに取材・執筆を続けてきたジャーナリストの白河桃子さんはそう指摘します。働く女性はいまどういう状況にあるのか。ジェンダーギャップを解消するために、国、組織、個人として、どんな行動が必要なのか。詳しくお話を聞きました。

「ガラスの天井」と「張り付く床」。日本の女性がぶつかるキャリアの壁


──女性のライフキャリアを長年追ってきた白河さんはいま、日本の働く女性を取り巻く環境をどのように捉えていますか?

世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数、日本120位(156カ国中)。この順位がすべてに影響していると思いますね。都心から地方の隅々まで根づくこの男女格差が最悪のかたちで顕在化したのが、今回の新型コロナウイルス感染症です。コロナ禍は「女性の危機」でもあるんですね。

まず、経済不況と雇用減少。その影響を最も受けたのは女性、特に非正規雇用の女性たちです。飲食業や宿泊業、生活や娯楽のサービス業など壊滅的なダメージを受けた業種は女性の就業率が高く、6割弱の女性は雇用調整の対象になりやすい非正規雇用で働いています。2020年末の時点で、女性の雇用は最大74万人が失われ、その数は男性の2倍ですからね。

それから家庭においても、保育園や学校が休みになったことによる家庭内の子育ての負担、外食の機会が減ったことで増えた家事の負担、そのほとんどを女性が担っています。その大変さから、家庭か仕事かの二択の選択に迫られている女性も少なくありません。

また、コロナ禍での自粛生活のストレスから、女性への配偶者からの暴力も増えている。内閣府の調査によれば、女性の4人に1人(22.5%)は配偶者DVの被害経験があり、2020年の相談件数は19万件で前年比1.6倍となっています。自殺者数も、男性が前年比で23人減少したのに対し、女性は935人増加していているんですね。



特にシングルマザーは、雇用についているのに貧困状態にあります。厚労省の調査によれば、ひとり親世帯の2人に1人(50.8%)が相対的貧困にあり、その80%が就業しているにもかかわらず、非正規の場合の年収は133万円となっています。

そこにきて、コロナで職を失い、休校で食費が増えた家庭も多い。コロナ禍、密になりやすいということで地域の「子ども食堂」は続けられなくなったけど、見るに見かねて「フードバンク」に鞍替えして、お弁当や食料を配っていたところもありました。

女性のライフキャリアの課題には、資質や実績があっても昇進できない組織内の壁「ガラスの天井」と、最低賃金から抜け出せない「張り付く床」のふたつがあるんですね。今回のコロナで露呈したジェンダーギャップは、一番弱いところを直撃したんです。
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文=徳 瑠里香

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