ライフスタイル

2022.09.03 18:00

女性は誰しもがかかりうる「子宮頸がん」。予防のためにできること

子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんのことで、性交渉の際に感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因で発症します。日本では年間約1.1万人の女性が罹患し、そのうち約2900人が亡くなっています[a]。20代から増え始め、30歳代までに治療で子宮を失う女性も年間約1000人[b]います。

若いうちから、女性にとって身近な病気である子宮頸がん。同時に、予防できるがんでもあります。子宮頸がんとその原因となるHPVウイルスの特徴、予防するためにできることについて、産婦人科医で「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」代表理事の稲葉可奈子先生にお話を聞きました。

性交渉の経験がある人には誰しも感染リスクがある、ありふれたウイルス「HPV」


──改めて、子宮頸がんとその原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)について、教えていただけますか。

はい。子宮頸がんは、20代〜40代の患者さんが多く、若いうちに、つまり妊娠・出産を迎える前に治療で子宮を失う可能性があり、さらには命を落としかねない病気なんですね。でも、HPVワクチンの接種と定期検診による予防で「がんにならずにすむ病気」でもあります。

子宮頸がんの95%以上の原因が、性交渉の際に感染するHPVです。HPVは性交渉の経験がある人は誰しもが感染しうるありふれたウイルスで、性交渉の経験が1度でもある人のおよそ8割は感染したことがあると推測されています。感染してもその9割以上が自然消滅していくんですが、運悪く、1割弱の確率で感染が続き、長期化すると細胞に異常をきたしてしまうことがあるんですね。



──HPVは性交渉で感染するけど、いわゆる「性感染症」とは違うんでしょうか? 特定のパートナーがいたとして、その人から感染したと考えられるものですか?

いわゆる性感染症とは違うのです。HPVはわたしたちの身近にあるウイルスで、かつ、感染してから異常がでるまでに長い時間がかかるので、性感染症のように「誰からもらったか」は重要ではないんです。というのも、感染から発症まで5年〜14年、数十年かかる場合もあります。

つまり、現在特定のパートナーがいたとしても、もっと前の性交渉で感染した可能性もあって、いつどこで感染したかは誰にもわからない。しばらく全く性交渉がなかったとしても、感染が続いている可能性もあります。

──へえ。いつ感染したのか、感染しているのかどうかもわからないまま、数年、数十年後に突然子宮頸がんになるんですか?!

いきなり子宮頸がんになるわけじゃないんですよ。「前がん病変」、医療用語では「異形成」と言って、がんになる前の細胞異常があるんですね。長いスパンで、「軽度」「中等度」「高度」の3段階で進行すると、子宮頸がんを発症します。


出典:みんパピ!「HPVと子宮頸がんはどのような関係があるの?」

──先ほど「運悪く」とおっしゃっていましたが、HPV感染が長期化して、前がん病変になり、進行して子宮頸がんになるかどうかは、“運”なんですか?

感染したHPVが自然消滅するか、異形成に発展するかは“運”ですね。その分かれ道に特別な原因があるわけではないので。異形成の進行に唯一関連があるとわかっているのは喫煙です。

でも、感染する前、つまり性交渉をする前にHPVワクチンで予防し、感染したあとでも定期検診で異形成のうちに早期発見し、高度になった段階で適切な治療ができれば、子宮頸がんは防げます!
次ページ > 子宮頸がんのリスクを9割近く減少できる「HPVワクチン」

文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

ForbesBrandVoice

人気記事