イスラエルのSol Chipは、IoTのための持続可能な長距離通信プラットフォームを提供している。精密農業分野で利用されることが多い同社製品の特徴は、エネルギー的に自立している点だ。
「電子機器にクリーンなエネルギーを供給したいという思いが、Light Chipの開発につながりました」と同社テディ・ゴーラン氏はいう。電気機器は24時間365日ずっとエネルギーが必要であり、Sol Chipは小型チップ「Light Chip」を搭載した太陽電池を開発した。この「Light Chip」は日陰などのさまざまな環境下で光を取り込むことができる。これらの組み合わせで、同社の製品は長期間継続して利用することが可能になっており、7年以上の間、バッテリー交換やメンテナンスなしでずっと運用されているユニットもあるという。
小型チップ「Light Chip」
郵便ポストのスマート化も目指す
そんなSol Chipは日本郵便と提携している。太陽光から電力を得るSol ChipのIoTソーラーバッテリーとセンサーを組み合わせて郵便ポストに搭載。さまざまなセンサーを搭載することで、郵便物の投函状況を監視してより効率的な取集業務を実現するだけでなく、気象状況といった環境データの取得、子どもや高齢者の見守りといった郵便ポストのスマート化構想を発表している。
不動産や精密農業への活用など高い汎用性
この日本郵便との構想からわかるようにメンテナンスフリーで長く利用できるSol Chipのソリューションは汎用性が非常に高い。いち早く提供されてきた持続可能な精密農業のソリューションをアメリカやヨーロッパ、イスラエルの企業を中心に販売され、加速度的に成長している。
またSol Chipは不動産テック市場にも参入しており、ヨーロッパの大規模なオフィスや商業施設に設置される温水ラジエーターシステムの制御を完全にデジタル化する持続可能なデジタルバルブソリューションの展開を目標としている。現在、気候変動や地政学的な状況により、ヨーロッパでは、エネルギー消費の大幅な削減を実現するソリューションに対する市場のニーズは非常に高まっている。もちろんこのソリューションは他の地域にも展開できるものであり、オフィスや商業施設だけでなく住宅にも応用可能で、その可能性はさらに大きくなるという。
さらに、Sol Chipは防衛やスマートインフラなど、他の分野でも試験的な取り組みを行っている。
たくさんのスタートアップを生み出すイスラエルの文化
先にも触れたがSol Chipはイスラエルのスタートアップだ。アメリカや欧州だけでなくあらゆる国・地域でスタートアップが誕生しているが、その中でもイスラエルから革新的な技術や製品を生み出す企業が輩出されている。
Sol ChipのCEOであるテディ・ゴーラン氏
「イスラエルでは、文化的に形式化された計画プロセスよりも、イノベーションと迅速な問題解決プロセスを好みます」とゴーラン氏はいう。「若い人たちは、早い時期から責任を持って困難に立ち向かうことが奨励されているため、一般的にスタートアップでの挑戦に失敗することに対してあまり抵抗がありません。また、イスラエルは国土が狭く、根本的な課題も多いため、サバイブする手段として技術的な競争優位を狙う文化があります」