女性は誰しもがかかりうる「子宮頸がん」。予防のためにできること


早期発見・治療するための定期検診。ワクチン接種との両輪で子宮頸がんを防ぐ


──二次予防となる定期検診についてもお聞きします。2年ごとに自治体から案内が来る定期検診で前がん病変が見つかった場合、どうなるんでしょう?

細胞異常である前がん病変が見つかって、それが「軽度」「中等度」だった場合は経過観察となります。数カ月~半年ごとに産婦人科に通って、進行度を確認するんです。「高度」に進行していた場合は、病変をとる手術やレーザー治療をします。

検診で前がん病変を早期発見し、高度に進行したときに適切な治療ができれば、子宮頸がんは予防できたことにはなるんですが、女性にとっては前がん病変でも苦痛は大きいと思います。

特に症状はないけれど、早期発見してもすぐに治せる治療法があるわけではないので、数カ月に1回のペースで産婦人科に通わないといけないし、常に進行の不安に襲われる。高度に進行した場合、手術が心身に与える影響もありますし、手術によっては子宮の入り口が少し短くなるので妊娠した時に早産のリスクが高まります。

定期検診はあくまで「がんの早期発見」であって前がん病変になることを予防できるわけではなく、そして前がん病変であっても女性にとってはつらい。ワクチン接種でそもそもの感染を防ぎ、前がん病変も予防することが重要になってくるんですね。

──たとえ症状がなかったとしても、前がん病変があることを知りながら、できることがないまま、進行に怯える日々はつらいですね。とはいえ、定期検診でがんに発展する前に早期発見をすることは大事。もし早期発見ができず、子宮頸がんになってしまったら、どうなるんでしょう?

ステージにもよりますが、治療ができる段階であれば、手術で子宮や卵巣を摘出、あるいは放射線療法や、抗がん剤での化学療法を行います。治療はつらいものですし、術後にQOL(生活の質)を下げる合併症が残るリスクもあります。子宮や卵巣を失って妊娠できなくなってしまうこともあるし、進行してからだと手術の適応にならないこともあります。残念ながら命を落としてしまうこともあります。

──命に関わることだと思うと、子宮頸がんを防ぐために、これから対象となる世代はワクチン接種をして、国が推奨する20歳以上の女性は定期検診に行くことが欠かせないですね。

そうなんです。日本ではまだまだ、HPVワクチンの存在を知らなかった、知っていたとしても「危険」というイメージがあって不安だと、親にも本人にも正確な情報が届かないまま、ワクチン接種の機会を逃しているケースが多くあります。

子宮頸がんは女性であれば誰もがかかりうるけれど、防げる病気だということを念頭において、ワクチン接種と定期検診でしっかり予防してほしいです。私も一人の産婦人科医として、子宮を失って悲しい思いをする女性や命を落とす女性がゼロになるよう、これからも情報発信を続けていきたいと思っています。


※この記事は、2022年4月にリリースされた「柿の木便り」からの転載です。

文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

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