女性は誰しもがかかりうる「子宮頸がん」。予防のためにできること


17歳以下の接種で、子宮頸がんのリスクを9割近く減少できる「HPVワクチン」の安全性


──一次予防となる「HPVワクチン」についても詳しく教えていただけますか。

HPVワクチンは「子宮頸がんワクチン」と呼ばれることが多いんですが、HPVの感染により発症する病気は子宮頸がんだけではないんです。男女それぞれ、中咽頭、陰茎、肛門、腟、外陰のがんや、性感染症である尖圭コンジローマの原因にもなります。なので、HPVワクチンを接種することで、子宮頸がん以外の病気も予防できるんですね。

ただ、子宮頸がんの罹患者が多いことから、日本では現在、そのリスクを予防するために、小6〜高1相当の女性を対象に公費でHPVワクチンの定期接種が受けられるようになっています。

──対象期間に、HPVワクチンを接種した場合の予防効果はどれくらいなんでしょう?

2020年に発表された海外の研究で、4価のHPVワクチンは子宮頸がんの発症リスクを63%下げることがわかっています。さらに、17歳未満の接種であれば、そのリスクを88%減少できることも証明されています。

──高い確率ですね。あの、「4価」というのはどういうことでしょうか?

HPVにはいくつかの種類があって、ワクチンのタイプによって、カバーできる型の数が異なるんです。HPVワクチンには、2価、4価、9価の3種類があり、それぞれ2、 4、 9種類のHPV型の感染を予防できます。

子宮頸がんの原因として最もリスクの高い16、18型を2、4価でカバーしているため、4価より9価が9/4倍優れている、というわけではないです。16歳までに4価を接種することは十分有効です。日本の公費の定期接種では現状4価が無料で受けられます。ただし、たとえ9価であっても全種類のHPV感染を防げるわけではないので、ワクチンを打ったとしても、のちの定期検診は重要です。

──なるほど。 HPVワクチンの安全性はどうなのでしょう? また、副反応などはありますか?

HPVワクチンは「危険」といったイメージがある方もいるかもしれませんが、WHOが安全なワクチンと判断していることもあり、世界中で広く接種されています。日本では2013年に、接種後の重い症状が大々的に報道されたことから、その印象が強いと思うのですが、ほかのワクチンと同等に安全であることが国内外のあらゆる研究によって証明されています。

接種した直後の痛みや腫れがHPVワクチンの一般的な副反応ですが、軽度で一時的なものです。一方で、当時報道された症状は、ワクチン接種に関係のない「有害事象」であることが多くの研究によりわかっています。ワクチンを接種するしないにかかわらず、何らかの理由でけいれんやめまいなどが起きることがあるのです。
次ページ > 男性にもHPVワクチン接種は必要?

文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

ForbesBrandVoice

人気記事