立体的かつ複雑で斬新。平和や自然への祈りを作品として昇華しようとする創作活動にも注目が集まった。翌年には「ルイ・ヴィトン」を擁するLVMHグループが主催するファッションデザイナーの登竜門「LVMHプライズ2022」のファイナリスト8人に選ばれ、グローバルでの活躍が期待されている。
そして8月には、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」アート&スタイル部門の受賞者にも選出された。
そんな彼を揺り動かし、形成するものは何なのか?
神道やアニミズムが身近な存在に
物心がついたころには、音楽活動をしていた両親や姉の影響で、家の中に音楽やカルチャーに関わるものが溢れていた。それゆえ、おのずとファッションにも興味を持つようになった。中高生時代には古着に夢中になり、海外のファッションショーの動画を見て、ファッションデザイナーに憧れを抱くようになる。
一方で、幼いころから風景や生き物をスケッチしたり粘土で遊んだりするなど、絵や立体造形をはじめとした美術が好きでたまらなかった。
そこで、「アートや表現を広く学び、ファッションの創作物に生かしたい」と、一浪して東京藝術大学に入りデザインを専攻。大学院に進み、伝達研究室でデザインの意図や情報や視覚的に伝達するための「ビジュアルコミュニケーションデザイン」を学んだ。
RYUNOSUKEOKAZAKI COLLECTION「000」
そんな彼をかたちづくったのは、出身地広島・宮島口での原体験。日本三景の一つである宮島(厳島)が眼前に広がる場所だ。
「海や緑などの豊かな自然や、厳島神社の壮麗な姿、潮の満ち引きで現れる道、神道、アニミズムなどが日常生活の身近な存在にありました」
被爆地ヒロシマの生まれで、平和の希求が自身に強く刻み込まれてきたのだ。
「平和への願いや、自然とのつながり、人の営みと祈り、そして生きることへの祈りや願いを込めた縄文土器などが、今も造形や作品のインスピレーション源になっています。そして、人と自然が触れ合う”一番近い存在“が衣服であると捉えて作品制作に臨んでいます」