デザイナーの登竜門でグローバル展開に本腰
岡﨑がつくる服は、性差がなく誰でも着られるジェンダーレスなものだ。しかも、季節にもとらわれないシーズンレスでもある。また、テキスタイルは、工場や産地の研究開発段階で生まれた素材のデッドストックを中心に使用している。あえて宣伝はしないけれども、実はとてもサステナブルなブランドだ。
RYUNOSUKEOKAZAKI COLLECTION「001」
そんなクリエイション全般が評価されたことで、今年、自身にとって大きな2つの出来事があった。一つは2月に、ファッションデザイナーの登竜門といわれる「LVMHプライズ 2022」のファイナリスト(8人)に選ばれたこと。もう一つは、6月に英国発のファッション誌「DAZED & CONFUSED」の表紙に「リュウノスケオカザキ」の作品が起用されたことだ。
「LVMHプライズ」ではパリに行き、審査の過程でサステナビリティに対する意識の高さを肌で感じた。それ以上に良かったのは、一緒に受賞したデザイナーたちとのつながりが持てたことだったという。
「とてもフランクに様々な国籍の他のデザイナーと話すことができ、日本以外の文化を肌で感じることができました。今後の活動のためにも、世界の文化への理解をより深めていくことが必要だと再認識しました。」
カクテルパーティの席で、「ディオール」のクリエイティブディレクターであり、今の時代を代表するデザイナーの一人、マリア・グラッツィア・キウリから「デザイナーはみんなアーティストになることに憧れる。けれども、君はすでにアーティストだから心配ないわね。そのまま頑張れば大丈夫よ」と激励されたのも自信につながった。
「これからも自分の核となること、根源を大切にしながら、作品をつくり続けたい」
「DAZED & CONFUSED」の表紙では、プロテニスプレイヤーの大坂ナオミが着用した。大坂のスポンサーでもあるナイキの協力を得て、ナイキ製品をアップサイクルしてつくり上げた作品だ。
「彼女はとても優秀なスポーツ選手だし、デイズドの表紙に起用されて本当に光栄だった。作品の性質上、自分で組み立てて着せ付けをする必要があったので、実際にロサンゼルスまで撮影に行き、思い出深いプロジェクトになりました」
ファッションとアートと両方で勝負
こうした評価を足がかりに、今後は日本にとどまらず世界で活動していく。
「拠点が日本でいいのかということも含めて、あり方を模索し、世界で戦える場所を増やしていきたい。そのためにも、海外の文化への理解を深める必要があり、自分自身が成長していかなければと思っています」
これからは、ファッションデザイナーとしてだけでなく、アーティストとしての側面にもさらに磨きをかけていく。ファッションとアートと両方で勝負し、ファッションではパリでランウェイショーを開くことを目指す。
「ランウェイショーが好きなのは、歩くことそれ自体が人間的であり、身体的であり、魅力的だからです。僕の服を着て歩いたときに生まれる動きも、身体が拡張したようでとても新鮮。さらに、生のショーでは会場や演出など、他の要素が加わった総合的な表現ができます。それ自体が新たな芸術になるんです。現場でないと感じられない空気感、臨場感、一瞬で終わるはかなさなどにも惹かれますね」
一方、アートではニューヨークを拠点に発信していくことが目標。著名ギャラリーやメトロポリタン美術館で大きな展示会が開けたら、と野望も見せる。
グローバルでの活躍、そして、彼の肩書きに「アーティスト」と加わる日も近そうだ。