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2022.09.30 12:00

平和や祈りを原動力に「纏う彫刻」をつくる 岡﨑龍之祐の世界


持ち味は「造形力」


岡﨑が創作活動をする場所は、主に都内にある自宅兼アトリエだ。

「デザイン画は描かない。一度頭の中を紙にしたためることで、想像が止まってしまう気がするから」


RYUNOSUKEOKAZAKI COLLECTION「001」

自分の周りの空間や物質の重力を感じながら、自由に想像を飛躍させてモノづくりをする。一体つくるのに、1週間でできるものもあれば、2カ月を要するケースもある。一体に集中することも、複数を同時並行でつくり上げることもある。

「僕の持ち味は造形力。それを生かしながら、素材の特性や身体との関係を試行錯誤し、つくりながら考え、偶発性をはらみながら見たことがないモノ、想像を超えるモノを生み出そうとしています。その行為自体が祈りにつながっているのです」

つくり続けることが大切


ファッションデザイナーやアーティストは時代の潮流や社会問題などに敏感な人が多いが、岡﨑もその一人だ。近年、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻、気候変動など、様々な社会問題が深刻化しているが、これをどのように受け止め、乗り越えようとしているのか。

自身もコロナ禍では「作品をつくっていないと自分の精神を保てなくなる」と感じることがあったという。そんな中、2020年に読んだ、アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』に強い影響を受けた。

同書によって、シュルレアリスム(超現実主義)や、ブルトンが提唱し、第一次世界大戦時の精神病患者の治療法として生み出された「思いついたままに筆記するとそれが新しい表現になる」というオートマティズム(自動筆記)の活動を知った。

「手を動かすことの意味と、僕が手を動かして想像を超えるものをつくり上げることの意味がつながり、作品をつくり続けようという気持ちが強くなった。コロナ禍を自分と向き合う内省の時期とすることができ、大きなターニングポイントになったと思う」

自身の経験から、岡﨑はとにかく「つくり続けること」が大切と話す。

「こんな時代だからこそ、自分の時間を大事にして、とにかく手を動かすことが大切です。もちろん、世に出るまでは大変だけれど、実はそれまでの過ごし方が重要なんです。一番自由であり、何者でもない、何物にもとらわれていない状態でいられる、のはとても大切な時期だと思います。まずはつくるしかない。作品数を増やそう。つくればつくるほど自分や、根源的な部分が見えてくるもの。作品群こそ、自分自身。つくろう。手を動かそう。難しいことだけれども、自分自身を信じよう」
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文=松下久美 構成=田中友梨 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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