小林:そうですよね。続いて、育児を含むライフステージの変化を考慮して、やりたい仕事よりも時短勤務などの条件を優先して仕事を決めている女性が多いように感じます。やりたいことと働きやすい環境を両立するためにできることはありますか?
浜田:私はライフイベントに入る前に、仕事の面白さを体験することが大事だと思います。今の若い世代は、出産する前から仕事と家庭の両立に不安を抱いていて、会社を選ぶ際も福利厚生や両立支援制度を重視します。もちろん大事な視点だとは思いますが、同時に若いうちから経験を積ませてくれるかどうかを見たほうがいい。
若いうちにたくさん経験して人脈とスキルの引き出しを増やしておけば、産後に時間的制約のある働き方になったときに、その蓄積が生きてくる。120%の力でやっていたことが、経験によって70%の力でできるようになるんです。制度がなければ自ら提案・交渉して新たにつくっていくこともできる。だから既存の支援制度よりも、若いうちにチャンスがあるかどうかを会社選びのときに意識してほしいです。
小林:なるほどー! 最後の質問です。3歳の子を育てながらフルタイムで勤務していますが、独身でバリバリ働いている方のみが昇進する職場環境です。女性の中でも価値観や評価が違う中、職場の制度や雰囲気を変えていくために、一社員としてできることはありますか?
浜田:3歳の子育ては大変なときですよね。うちは娘が16歳で年代によって悩みも変わってきますが、物理的に大変だったのは短かったと感じます。なので今踏ん張って、無理をしすぎずにがんばる姿を後輩に見せてほしい。
とはいえがんばりすぎると、後輩たちにプレッシャーを与えてしまうので、あなただけが会社でがんばるんじゃなくて、パートナーがいる場合は、家庭で夫にもがんばってもらってください。家庭で、夫が育休を取ったり時短勤務をして育児に参加することで、夫の職場が変わるかもしれない。それは社会が変わる一歩にもなるのです。
小林:一社員として、という視点が素晴らしいですね。働く中での違和感や、もっとこうしたらいいのにと感じることを押し殺さず、記録に残したり周りに伝えていってほしいなと思います。
あっという間にお時間がきてしまいました。私自身、家事育児に追われて自分には能力がないんじゃないか、できないんじゃないかと思い込んで仕事を諦める女性たちと出会ってきました。今回、浜田さんのお話を伺って、女性個人の選択には、社会構造の問題、無意識のバイアスが影響していることをご理解いただけたんじゃないかと思います。
浜田:ありがとうございます。みなさん一人ひとりがそれぞれの場所で小さなチャレンジをしていくことが、社会を変えていく原動力になると私は信じています。私なんてと思わずに、ぜひ小さくても一歩を踏み出してもらえたら嬉しいです。
※この記事は、2022年10月にリリースされた「柿の木便り」からの転載です。