中道:日本はベースが自己否定から始まりますからね。
自分を下げて相手を上げる謙遜の文化も、日本にしかありません。僕も子どもには「伝わらなかったら何も意味ない」「海外で謙遜したところで伝わらない」と、日本と海外の違いを考えるように伝えています。とはいえ、混乱するだろうとも感じています。
レイ:前半でインターナショナルスクールに通った話をしましたが、印象に残っていることの一つに、70カ国以上から250人の子どもが集まっている、多様性がありました。
そこでは、日本人をはじめとするアジア人以外の子は、誰もが自分の町や故郷が一番という考えを持っていました。聞いたことのない田舎の町が、それぞれ一番だと。
はじめは「なんで他の国に行ったことないのに、一番がわかるのか」と思ったものです。ただ、今になって考えると、彼や彼女たちにとっては自分の町が一番好きだったんだろうと。「僕がハッピーなら、僕にとっては一番」という根拠のない自信があり、他と比較もしなかったはずです。
当時は衝撃的でしたが、あの考えこそが自己肯定感であり、自己否定から入ってないあらわれだったと思います。
中道:根拠のない自信は20代のような若い時期において、特に大事だと言えそうです。僕もイギリスから帰国した際、「根拠はないけど、何だかいけると思うんだよね」と口にしていました。
当時はロジックも説得力もないものの、オーラで押し切ってしまうようなところはあったと思います。どこか変な自信があったんでしょうね。
レイ:僕は逆でした。20代の頃はとにかく自信がなかったですね。日本に帰国せず、アメリカでも最もタフなニューヨークに行き、さらにアジア人というマイノリティであったことから、ハンデを感じていました。
中道:自信のなさによって、人生のわかれ道でうまくいかなかったとしたら、もったいないことですよね。
レイ:もったいないです。それが、今になってようやくわかったので、子供たちや日本人の若者には、自信の大切さを何とかして伝えていきたいと思っています。
中道:2019年に設立したI&COの東京オフィスは、コロナ禍もあるなかで順調ですか。
レイ:2019年の夏に立ち上げ、2020年のはじめにコロナが始まったので、当初はどうなるかなと思っていました。とはいえ、東京オフィスの創業メンバーとして2人の社員を雇ったところから、今では契約社員も含めると30人ほどが在籍しています。ボスの僕が日本に行かなくなったことで伸びたとも言えます。
この2年間は、今の時代を生きている世界中の誰もが経験したことのない事態でしたから、当然将来が見通せない不安はありましたが、現在のところ安心こそできませんが、順調とは言えると思います。