ビジネス

2022.10.02 13:00

新時代の大富豪たち 世界のビリオネアランキング2022

Forbes JAPAN編集部

“社会のバロメーター”としての「世界のビリオネアランキング」


ロシアのビリオネアがよって立つ“砂上の楼閣”は遠からず崩れ去るだろう──。

2014年4月、Forbes JAPAN創刊号「ビリオネアランキング」の取材で、カナダの下院議員クリスティア・フリーランド(現・カナダ副首相)は筆者にそう予言した。英紙フィナンシャル・タイムズのモスクワ支局長時代の1990年代に「オリガルヒ(新興財閥)」の台頭、2000年代にウォール街を見てきた彼女は、富裕層のいくつかの特徴に気づいた。

1. 「アルファ・ギーク」と言われるテクノロジー系起業家の台

2. 国境を超えてコミュニティを形成する「トライブ(部族)化」である。

トライブは生活様式と価値観が近いもの同士が結びつくことで派生するが、カネやネットワークにものを言わせて、過度の影響力を及ぼすようになると、新興国では「収奪政治」につながりやすい。そして、露ウラジーミル・プーチン大統領も同じだと指摘したのだ。

「(プーチン大統領が)本当に恐れているのは、ロシアも金権政治体質であることを国民に気づかれてしまうことなのです」(フリーランド)

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻と、その後の経済制裁により、オリガルヒたちが必ずしも公正な競争のもととはいえない手段で蓄えてきた富が白日のもとにさらされた。制裁を受けた富豪たちは移動手段であり、“商談”の場でもあるヨット、不動産や所有するスポーツチームなどを失っている。プーチン大統領の資産と、オリガルヒの富の源泉に関しては「プーチンとオリガルヒについて いま知っておくべき『お金の地政学』」を読んでいただきたい。

なぜ、フォーブスはビリオネアランキングを掲載するのか? 確かに、品性やプライバシーの観点から批判の声もある。だがフォーブスは、「インクルーシブ(包括的な)資本主義」を標榜している。だからこそ、リスクを取って世界を良きほうへ変える起業家を賞賛する。そして、富豪がもつ力と影響力も大きな理由だ。その使われ方によっては、社会は良いほうにも、悪いほうにも変わる。複合的な要因があるとはいえ、世界はそれを目の当たりにしている。

もちろん負の面ばかりではない。コロナ禍では多くの人がeコマースの利便性を享受し、ワクチンが驚異的な速度で開発された。アマゾン・ドット・コムを創業したのは2位のジェフ・ベゾスで、多額のワクチン開発費を寄付したのは4位でマイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツだ。1位のスペースX創業者のイーロン・マスクも自社の衛星通信システム「スターリンク」をウクライナ市民に提供している。

富豪の影響力もだが、より注視すべきは社会システムのほうだろう。集中する富を平準化し、持続可能な社会を築くための道を多くの人が模索している。“お金贈りおじさん”ことファッション通販サイト「ZOZOTOWN」創業者、前澤友作の社会実験や、第2部「いま知るべき『Web3の最前線』」に登場する「DAO(分散型自律組織)」の無数の人々による取り組みに、そのヒントがあるかもしれない。

特集「世界のビリオネアランキング 2022」から世界史のなかで「今」がどういう位置づけで、ここから先に何が見えるか──。未来を見いだせたとしたら編集部としては望外の喜びだ。

文=井関庸介

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事