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2022.09.07 17:00

みんなで運営し出資する「DAO」は豊かさを分散する特効薬か

投資DAO「トリビュート・ラボ」の アーロン・ライトCEO(最高経営責任者・左)と、プリヤンカ・デサイ COO(最高執行責任者・右)

投資DAO「トリビュート・ラボ」の アーロン・ライトCEO(最高経営責任者・左)と、プリヤンカ・デサイ COO(最高執行責任者・右)

ブロックチェーン技術やメカニズムを活用しているのは、「ブロックチェーン50」に登場する企業ばかりではない。むしろ、それを下支えする思想とテクノロジーは、十分な資金をもたない「個人」にこそ、力を与える可能性を秘めている。圧倒的に足りていない女性起業家の育成や、安定した収入を確立しにくいアートやゲーム制作の支援、嗜好を同じくする人たちによる美術品の共同購入・管理など、すでに始まっている取り組みをご紹介しよう。

ここ2年ほどで急激な成長を遂げたNFT(非代替性トークン)の分野で、驚異的なリターンをあげている投資家集団が「Flamingo(フラミンゴ)」と呼ばれるグループだ。デジタルアートの売買を可能にするNFTの注目度は、2021年春にビープルという無名のアーティストのNFTが約6900万ドルで落札されて以降、急激に高まったが、フラミンゴは、「クリプトパンク」と呼ばれる人気のNFTアートを筆頭に、さまざまな希少な作品に投資を行っている。

2021年2月、フラミンゴはズーム上で会合を開き、59人の投資家の投票によってクリプトパンクへの投資を決定した。当時1000万ドルの資金を保有していた彼らは、全体の10%に相当する約100万ドルを投じて、150点のクリプトパンクを入手した。非常にリスキーな賭けだったが、この投資は成功を収め、彼らが入手した資産の価値は先ごろ、投資額の30倍の3000万ドルと評価された。

フラミンゴは、「DAO(分散型自律組織)」と呼ばれる組織の形態をとる投資グループで、投資先をブロックチェーン上の参加者の投票で決め、暗号通貨のトークンで利益を分配している。主にイーサリアムを基盤とするDAOはフラットな組織が特徴でリーダーをもたない。アート作品に限らず、投資などさまざまなプロジェクトの運営に用いられるが、フラミンゴはNFTを共同購入することにより、個人では購入できない高い価値をもつアート作品を入手し、収益をあげることに特化している。

フラミンゴを立ち上げた「Tribute Labs(トリビュート・ラボ)」の共同創業者でCEO(最高経営責任者)のアーロン・ライト(41)は、DAOを「銀行口座に紐付いたレディット(ネットの掲示板)のようなものだ」と説明する。

DAOは今、本格的なオルタナティブ投資の手段として台頭しつつある。株式投資にくわしい人なら、今から四半世紀前に米イリノイ州の教会の地下で運営されていた「ビアーズタウン・レディース」というアマチュア投資クラブについて聞いたことがあるかもしれない。

投資にはズブの素人の70歳台の女性16人が集まり、知恵を出し合ってさまざまな企業の株に投資した結果、年率約23%という驚異的リターンを叩き出したこの投資クラブは、「ウォール街を打ち負かした」と話題を呼び、『ビアーズタウンのおばあちゃんたちの株式投資大作戦』(邦訳:日本経済新聞社刊、現在は絶版)などのベストセラー書籍を生み出した。

DAOは、言わばそのコンセプトをデジタル化したもので、志を同じくする人々が、プールされた資金の使途や管理方法を投票によって決定し、コミュニケーションには、チャットアプリが用いられている。DAOは、各メンバーが知恵を出し合うことで、投資リスクを引き下げ、民主的なプロセスで収益を分配している。

暗号通貨が絡む投資は、SEC(米証券取引委員会)の厳しい監視の目にさらされるのが常だが、フラミンゴは参加者を100人以下に制限するなどのルールを守ることで、当局の規制を回避する。またリーダー不在のDAOでは、一般的な投資ファンドが請求する収益の20%というフィーは存在しない。トリビュート・ラボの場合は、DAOの初期投資額の2%を年間手数料として徴収する代わりに、法務や税務関連の手続きのすべてを引き受けている。
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文=ジェフ・カウフリン & イザベル・コントレラス 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=木村理恵 編集=上田裕資

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