『リトル・マーメイド』実写版、予告編公開でバッシングが愚の骨頂に

『リトル・マーメイド』実写版リメークで主演を務める歌手のハリー・ベイリー(Getty Images)

ディズニーの映画『リトル・マーメイド』実写版リメークは、主役のアリエルに黒人歌手のハリー・ベイリーが起用されたことが発表されてから、常に激しい議論の的となってきた。

ディズニーの半端なリメーク作品がオリジナル版のファンから批判されることはよくあるが、今回のバッシングは明らかに人種差別的なものだ。白人ではない女優が主役を演じることに、ネガティブな反応が集中している。

最近公開された予告編は、怒りに燃えた「ファン」から2日間で150万件の「低評価」を集めた。ユーチューブは低評価のカウンターを非表示としているが、その数はブラウザーの拡張機能を使えば見ることができる。

コメント欄には、原作となったデンマークのおとぎ話を尊重すべきだという主張も投稿されたが、ディズニーのオリジナル版アニメ映画が原作を跡形もないほど脚色していることを考えれば、ばかげた主張だ。ついには、AI(人工知能)を使ってベイリーの顔を赤毛の白人の顔に置き換えた上で、同作が公開されれば全編を「修正」すると宣言するツイッターユーザーまで現れた。

こうした悪質なファン層はしばらく前から問題となってきたが、一体なぜこんな状況になってしまったのだろうか? 8歳の女の子たちに向けて作られた映画に対し、大勢の成人男性が怒りをぶつけるのはなぜなのだろう? 文化的な問題についての戦いの場にはほかにもいろいろあるのに、なぜディズニーの退屈なリメーク作品に執着してしまうのだろうか?

ノスタルジア(昔を懐かしむ気持ち)を利用した作品が次々と売り出される風潮については批判の余地が大きくあるが、ディズニーとしては、自社の黄金時代の栄光にあずかることは筋が通った戦略だ。これまでの実写版リメークは、いくつかの失敗作を除いて巨額の興行収入を上げてきた。ディズニーは、90年代にヒット映画の続編を次々と劇場非公開作品として発表したときのように、今最も稼げる収入源に注力しているのだ。
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編集=遠藤宗生

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