黒海沿岸の自然豊かな場所に山手線の内側よりも広い敷地をもつという宮殿のような豪邸を所有し、世界の海で、合計すると数十億ドル相当になる何隻ものスーパーヨットが彼を待っている。建前のプーチンとはあまりにも違いすぎる、本当のプーチンの姿とはいかなるものなのか。ウラジーミル・プーチンの資産は本当のところどのくらいあるのだろうか。
連日のニュースで「オリガルヒ(新興財閥)」という言葉もすっかり耳になじんだ感がある。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う西側諸国による制裁に始まり、ワイドショーや週刊誌で報道される実業家の相次ぐ自殺や不審死……。西側諸国は、ウラジーミル・プーチン大統領との関係が深く“資金源”ともいわれる存在だからこそ制裁対象としたはずだが、オリガルヒの実際の影響力には懐疑的な声もある。重要なのは彼らの背景のほうだろう。
2015年1月、カナダの国会議員クリスティア・フリーランド(現・カナダ副首相)は「Forbes JAPAN」の取材に対して、「流動性資産をもつ富裕層は、競うようにロシアから逃げ出している」と語った。
ウクライナでジャーナリスト活動を始め、英紙「フィナンシャル・タイムズ」のモスクワ支局長を務めた経験をもつ彼女は、1990年代のロシアでオリガルヒの台頭を間近で観察し、プーチン政権は事実上の「専制政治」であり、実態は彼とその取り巻きを肥やすための収奪政治だと言い切った。
オリガルヒが所有するスーパーヨットは、各地の港で当局に接収されたものも少なくない。アンドレイ・メルニチェンコのセイルアシストヨット「SY A」やドミトリー・パンピャンスキーのスーパーヨット「アクシオマ」などが接収された一方で、アンドレイ・スコッチの「マダム・グー」など行先不明となっている船も多い。
ロシアに君臨し続けるプーチン大統領の資産とはいかなるものか。フォーブスがその実態に迫った。
数十年にわたり世界の富についてあらゆる調査をしてきたフォーブス編集部をもってしても、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の個人資産は最大のミステリーだ。ベールに包まれた名門デュポン家の遺産やエリザベス女王の資産、さらにはメキシコの麻薬王「エル・チャポ」ことホアキン・グスマンが築いた財産を特定するよりも困難だと言える。