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2022.09.14 20:00

日本の伝統産業のブランド化 ドイツと二人三脚で取り組んだ12年


中道:僕の今のメインの仕事もブランドプロデュースになりますが、同じようなことを毎日言っています。モノだけで言えば、中国やバングラデシュでも同じようなクオリティで安く作れる。そんな世の中だからこそアートが必要で、日本の足りないところでもあります。僕もイギリスで生活したことがベースになっていますが、村瀬さんはイギリスからドイツに渡りますよね。

村瀬:1年ほど経ってからドイツに行きます。本当はイギリスにいたかったものの、おカネがなくなってしまって。そんなに裕福な家庭ではなかったので、イギリスの学費も日本で1年間アルバイトをして貯めたお金だったのですが、1年経って底をついたんです。

イギリスでもアルバイトをしていましたが、物価も高くて。困っていたら、同じ寮だったドイツ人の女の子から、「ドイツでは学費がタダだ」と聞いて。当時はドイツの美術についてエッセイを書いていたこともあり、ゲルハルト・リヒターやヨーゼフ・ボイスといった芸術家をちょうど知った頃でもありました。

中道:運命のようです。

村瀬: 2週間ほどでデュッセルドルフ行きを決め、いざ行ってみると、アートやクリエイティブが身近にあるのが心地よく、現地のアートアカデミーを受験しました。



試験は25枚ほどのA1の用紙に自分の作品を載せ、ポートフォリオとして提出するだけ。イギリスでは面接があり、日本人男性であることや語学レベルも把握できるものの、ドイツの試験はポートフォリオを事務局に渡して終わりでした。

教授たちが数日かけてすべて見ていくわけですが、合否は作品だけで決めていました。受験生が日本人かドイツ人かもわからないし、性別も年齢もわかりません。それに合格人数制限がなく、数十人しか入れない年があったり、面白い受験生がいたら100人合格する年もあります。

中道:巡り合わせがすごいですね。

村瀬:基準も面白く、一度先生に「どう見ているか」と聞いてみたら、「伸びしろを見ている」ということでした。「技術がある受験生はすでに完成しているから教える必要はない」と。だから上手な人こそ入れない。一方で、「教えてみたら面白くなるかもしれない」という受験生が合格していくイメージです。

中道:持っているイメージや意見に光るものがあればピックアップしていくんですね。ディスカッションが多い大学生活でしたか。

村瀬:はい。入試だけでなく授業も変わっていて。学費がかからないうえ、出欠もとらず、成績評価もなく、先生に「卒業します」と言わなければ、どれだけでもいられるシステム。卒業するタイミングは学生が自ら決め、「そろそろ俺は出る」「もう自立できる」と思ったタイミングで卒業していきます。そうかと思えば、10年ほどいるプロのような学生もいます。

中道:すごい。ある意味、理に適っていますよね。「いける」と思ったら行っていいと。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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