「日本語は不利」という自覚が日本の可能性を広げる

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日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

8月22日配信は、ミラノと東京を拠点に活動するビジネス+文化のデザイナーで、モバイルクルーズ代表取締役 / De-Tales ltd.ディレクターの安西洋之がゲスト。西洋と東洋、欧州と日本を見つめる中で見えてきた、日本の独自性と課題とはなにか。専門であるラグジュアリーの未来も交えて聞いた。


中道:前回に引き続きモバイルクルーズ代表取締役、De-Tales ltd.のディレクターである安西洋之さんをお迎えして、お届けしております。今日もよろしくお願いします。

3月に出版された『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』のなかで、“ラグジュアリー”という言葉と“実際のラグジュアリー”の違いについて記されていた点は、非常に納得できました。安西さんが著書で最も伝えたかったポイントはなんでしょうか?

安西:世の中に、「イケていないもの」、「ダサイもの」がなくなってきたことですね。それにも関わらず、なぜストレスを感じたり、愛せるものがないのだろうかと。最近は様々なことが「民主化」という名のもとに「大衆化」されていますよね。

中道:確かに、僕自身、ナイキやリーバイスにおける仕事で、価格を下げて浸透させようという「大衆化」を日本で行うのには、疑問を感じていました。リーバイスはインドや中国と同様に、低価格で量産する手法を日本でも適用させようとしましたが、僕としては、日本ではリーバイスが培ってきたカルチャーをもとに適正価格で戦うべきだという考えでした。

結局、サンフランシスコの本社はその考えを受け入れてくれましたが、当時抱いた思いは今でも変わらず、日本がやるべきことは「大衆化」ではないと考えています。

道が綺麗だったり、電車が時間通りに来たりと、日本は“当たり前”のレベルが世界一高い国。特別なことでなくても、「民主化」された、日本の“当たり前”を海外に持ち込めれば、文化の継承にも繋がるのではないかと考えています。食文化はその代表例で、今は自分の会社でその実験をしているところです。

安西:この間、大学時代の先輩が、寿司屋で酒を飲みながらいいヒントをくれました。それが、西洋と東洋での時間のイメージの違いです。

西洋では時間を考えるときに必ず左から右に一直線で考える一方、仏教哲学の基本では時間は縦で考えるということでした。その縦の時間軸で物事を捉えると、自著にも記したフェルナン・ブローデルというフランスの歴史家の話もわかりやすくなるはずです。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央 写真=Getty Images

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