Bリーグ アルバルク東京「勝負の一年」 林社長の戦略と勝算


地域貢献に関しても、移転や人的な問題を理由にして蔑ろにしてしまっていました。ここ数年、色々な所に遠征して、地域の力がチームを後押ししていることを痛感したんです。地元での草の根活動が重要だという当たり前のことを、直ぐに出る結果を追い求めていた間に忘れてしまっていたところがありました。

これらの課題については、Next FAZEを掲げた今シーズンから、一段と力を入れて地道に取り組んでいくことになります。新アリーナに向けても、この時期にクラブの経営基盤を構築しておく必要があり、採用、人材育成にも注力していきます。

──移転が続く中ではどうしても、地域貢献やビジネスの軸足の置き方が難しいですよね。

その反省をもとに、2シーズン前にコミュニティーグループを新設しました。

ホームタウンの渋谷区、立川市、練習拠点のある府中市、本社を置く文京区と、我々にはいくつも地元があるわけですが、今後はクラブを支えてくださっている地域の皆さんの所に、我々の方からしっかり出向いていって、公共財としての価値を体感していただけるように取り組んでいきます。

6月4日に立川市役所で開催された「2021-22シーズン終了報告会 IN 立川市役所」
6月4日に立川市役所で開催された「2021-22シーズン終了報告会 IN 立川市役所」

立川についても、今シーズン5試合を予定していますし、今後も(ホームゲームの80%以上をホームアリーナで実施しなければならないという)Bリーグの規定の中で可能な限り開催させていただきたいと考えています。

市役所の皆さん、市長からも、移転後も一緒にやっていこうと言っていただいています。立川の皆さんは、我々にとって命の恩人。ホームアリーナでなくなったから、つながりがなくなるというつもりは決してありません。

さらには、アルバルク「東京」でもありますので、東京全体をホームタウンに、というくらいの想いでやっていきたいと考えています。

──コロナ禍の影響について、ビジネス面ではいかがでしたか?

単なる試合中止の一時的な影響にとどまらず、ボディーブローのように響いています。コロナ前には何の躊躇いもなく立ち寄ってもらえていた観戦習慣、意識が途切れてしまいました。

同様に、社内への影響も深刻なものがありました。チケット営業の士気、販売力が知らず知らずの間に弱まってしまったんです。入場制限による試合開催時、例えば収容定員50%の場合には、これまでの半数を売れば満員ということになります。その期間が長かったために、慣れのようなものがあるのは否めません。

また環境の面でも、コロナ前には当たり前にあった、飲み会などのコミュニケーションやそこから出てくる発想が失われてしまいました。

やはり、このような気持ち、人の問題は大切です。我々としては、感染対策をしっかりと整えるとともに、世の中の状況やニーズをみながら、その時々に適した形で、コロナとうまく付き合い始めていくように考えていかなくてはなりません。

一方で、デジタル施策においては、コロナ前には考えられなかったような進化を遂げています。これまでは試合中止や無観客開催の代替として、あるいはファンクラブのサービスとして行ってきましたが、皆さんのご要望によっては今後、有料化できるようなコンテンツも検討していきたいと思っています。

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画像提供=トヨタアルバルク東京 編集=宇藤智子

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