野球したことがなくても、スカウトってできるんですか?
初めて会った人が「プロ野球チームでスカウトをしています」と言ったら、あなたはどういう反応をするでしょうか。
ありふれた職業ではないので、まずびっくりするかもしれない。野球に興味がある方なら、面白そう、と思うかもしれない。いずれにせよ、多分こう聞くでしょう。
「じゃあ、野球をやってたんですね?」
そしてもし、その答えがノーだったら、驚いてこう聞くでしょう。
「え?、野球したことがなくてもスカウトってできるんですか?」
これは、僕が初めてお会いする人との間でほぼ毎回起こるやりとりです。
僕は大学を卒業してからずっと、日米のプロ野球の球団で働いてきました。千葉ロッテマリーンズ、サンフランシスコジャイアンツ、横浜DeNAベイスターズ、ボストンレッドソックス、そして今は、福岡ソフトバンクホークスにいます。
球団の中には様々な部署があるのですが、僕は経歴の17年間ずっと、チームを編成する仕事、特にスカウティングに従事してきました。
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スカウティングというのは、つまり人事採用です。人を評価して採用する、一般の会社となんら変わりません。少し特殊だとすれば、そのスケール。“新卒”の人材にも何千万円を支払うのが当たり前ですし、“ライバル会社”からの引き抜きや外国人人材の招聘には、数億円を使うこともざらです。
そんなプロ野球チームの人事評価のしくみは、どんなに素晴らしいか。その秘訣を、これから皆さんにお話していきたい。と、言いたいところですが…。
なぜ「元プロ野球選手でないと、選手の評価はできない」と思うのか?
話を戻すと、野球をやっていたか?という最初の質問に対しての僕の答えはノー。プロ野球どころか甲子園にも出ていない、そもそも野球部に入っていなかった。僕は皆さんの思う“野球をやっていた人”の対極中の対極にいます。
そして二つ目の質問、野球経験がなくてもスカウトはできるのか。これに対しての答えは、イエスです。誤解を恐れずに言えば、誰だってできます。
なぜ、元プロ野球選手でなくてもスカウトができるのか? 僕は逆に問いたい。なぜ「元プロ野球選手でないと、選手の評価はできない」と思うのか?
皆さんの問いと僕の問い。この二つの問いが浮き彫りにするのは、もっと根源的な、大きな問いです。
すなわち、ヒトや、モノや、コトの評価、とはどういうことなのか──。