世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数では日本は146カ国中116位、G7の中では最下位(2022年7月)である。東証一部上場企業の中における女性役員比率はここ10年で5倍になったがそれでも7.5%(2021年7月)に過ぎない。
その理由は、インクルージョンにある。インクルージョンは直訳すると「包括」であるが、ここでは異なったジェンダー、教育・思想、国籍を持った人たちを受け入れ、許容するという意味を持つ。
したがって、ダイバーシティ&インクルージョンとは『多様性を持った人材の状態というダイバーシティと、それを許容しレスペクトする文化となるインクルージョン』と捉えることできる。
日本は、ダイバーシティの最低目標を掲げ、その最低目標を達成することによりダイバーシティ推進の第一歩に踏み出しているが、インクルージョンという文化・風土づくりにはまだまだ時間がかかっているのが現状である。
ダイバーシティの企業価値向上効果
ところで、企業経営上なぜダイバーシティが重要なのだろうか。企業経営である以上そこには企業価値向上という大義があるべきである。
私のような金融に長く身を置く者がダイバーシティと聞くと、どうしてもポートフォリオにおける分散(diversification)と重ねてしまう。ポートフォリオ理論では分散投資はリスク調整後のリターンを向上させるが、これは収益が向上するわけではなくリスクが縮小するに過ぎない。
しかし人材のダイバーシティは違う。仮に多様性を受け入れるならば人材間で新たな化学反応を生じさせ、ひいては新たな価値を創造する可能性をもたらす。すなわちダイバーシティはイノベーションや新しいアイディアを創造する価値創造経営の一環と捉えることができよう。
JVCAによるダイバーシティ&インクルージョン・イニシアティブ(DII)
ダイバーシティ&インクルージョンが新しいアイディアやイノベーションという化学反応を起こし企業価値の創造を推進させるなら、すでに経営基盤や組織・文化が確立した企業ではなかなか進まないのは容易に理解できる。
であるならば今、政府が力を入れていて尚かつ、機動性が高く、またその一方でカルチャーや組織が十分できていないスタートアップからダイバーシティを推進することには大きな意味がある。